2026/08/25

スウォーム攻撃に挑むCRADS多層防空の全貌と課題


背景と脅威

ロシアのウクライナ侵攻やイラン・米国間の戦闘において、無人機とミサイルの複合攻撃が常態化した。これに伴い、スウォーム攻撃や飽和攻撃が課題として認識されている。

周辺国は発射台付き車両(TEL)や潜水艦からミサイルを発射し、即時性と秘匿性を高めている。低空変則軌道弾道ミサイル、極超音速滑空兵器、巡航兵器の開発・配備も進行中である。

防衛省の方針と予算

防衛省は2027年度に近距離対空システム(CRADS)の開発に着手する方針を決定した。開発費用は「事項要求」に含めるが、概算金額は明示されていない。

2026年度予算では高出力マイクロ波(HPM)研究に13億円が計上され、2027年度からはHPMの実証事業とデコイ導入が予定されている。

迎撃ドローンの早期取得プログラムは約3か月で完了する調達枠組みで実施され、2026年6月の公募から国内外4社・4機種が選定された。

日本の多層防衛体制

2004年度からミサイル防衛(MD)システムを整備し、弾道ミサイル防衛(BMD)はイージス艦(上層)とPAC‑3(下層)をJADGEで連携させている。イージス艦は8隻、全国にPAC‑3部隊が配置され、多層防空体制を維持している。

統合防空ミサイル防衛は強化された防衛網と反撃能力で抑止を狙い、スタンド・オフ防衛能力により島嶼部侵攻艦艇や上陸部隊に遠距離から対処できる。

CRADSシステム概要

CRADSは車両搭載型の近距離対空システムで、迎撃ミサイル、機関砲、レーザー兵器を統合する。飛来した無人機やミサイルを自動識別し、最適な手段で迎撃することで多層的な迎撃態勢を実現する。

主要技術要素

  • 迎撃ミサイル:長射程だが高価で弾数に限りがある。
  • 機関砲:安価で弾数が多いが射程が短い。
  • レーザー兵器(開発中):弾数制限がなく、射程は機関砲よりさらに短い。
  • 高出力マイクロ波(HPM):ビーム状照射でドローンの電子制御システムを破壊し、光速で目標に到達する。
  • デコイ:自衛隊装備品を模したおとり装備で標的を増やし、実機への被害を軽減する。

迎撃ドローン早期取得プログラム

公募は2026年6月に開始し、38社から提案を受けたうち国内外4社・4機種が選定された。海上自衛隊は基地・艦艇からの発射と自動目標捕捉を実証試験した。

対象は長射程自爆型UAV(例:イラン製「シャヘド」型、中国軍「WL‑10」「GJ‑2」)で、飛行高度は18,000フィート未満、速度は約250ノット、重量は600 kg以下と定義される。

キルチェーンは次の手順で構成される。

  • 警戒レーダーで目標を捕捉。
  • 中間誘導で追跡。
  • 終末誘導で精密誘導。
  • AIカメラで識別。
  • 近接信管またはラミングで破壊。

取得コストは数百万円/機であり、従来の対空ミサイルは数千万円から数億円/発である。AI搭載により通信遮断や電波妨害下でも自律的に追跡・無力化を目指す。

課題と展望

  • スウォーム・飽和攻撃への対処が技術的・運用的に重要である。
  • 安価ドローンに対し高価ミサイルを使用すると防衛側の弾薬が枯渇する「コスト逆転現象」が指摘されている。
  • CRADSは多層迎撃態勢を実装し、「新しい戦い方」の柱として位置付けられる。
  • 高出力レーザーとHPMの研究が継続され、小型無人機迎撃能力の拡充が目指されている。
  • 国内工場での大量生産体制により、安く・大量に・国内技術で防空網を構築できる。
  • AIと自律技術の進展により、通信遮断下でも迎撃が可能になることが期待されている。

産業・サプライチェーンの動向

テラドローンは2026年6月にウクライナの迎撃ドローン企業を子会社化し、時速300km、作業範囲約32km、電動推進による隠密性を備える「Terra A1」を提供する。低コスト・大量生産・即応性が特徴で、CRADSと相補的な役割を想定している。

Prodroneは資金調達により国内ドローン産業のサプライチェーン強靭化を目指す。

部品供給の海外依存は安全保障上のリスクと指摘されている。

AIが攻撃判断を担うことへの倫理的・国際法的課題が残っている。