2026/08/25

シンガポール少子化対策 7万ドル育児給付と保育料削減


背景と少子化の状況

シンガポールの合計特殊出生率は2023年と2025年ともに0.87で、過去最低かつ世界最低水準に低下した。2023年は独立後初めて1.0を下回り、2025年の出生数は29,864人で3万人を下回った。

2024年には人口の5分の1が65歳以上になると予測され、超高齢社会への突入が見込まれる。

ローレンス・ウォン首相は、生活コストへの懸念が若年層の家族形成意欲を抑制していると指摘している。

過去の少子化対策

  • 2001年に導入された「ベビーボーナス」制度では、第一子・第二子に11,000シンガポールドル、第三子以降に13,000シンガポールドルを支給した。
  • 「チャイルド・ディベロップメント・アカウント(CDA)」は、子ども名義口座に親が拠出した金額と同額を政府が上乗せした。
  • 「ファースト・ステップ・グラント」では、出産時に子ども名義口座へ5,000シンガポールドルを自動拠出した。
  • 2023年6月に、出産促進インセンティブへの依存を減らし、家庭生活向上支援へシフトする方針が表明された。
  • 住宅優遇や税制優遇策は長年にわたり拡充され、出生奨励策として実施されている。

新たな直接給付と育児支援策

出生から17歳までの子ども1人につき、総額約70,000シンガポールドル(約880万円)を直接給付する方針が示された。給付スケジュールは以下の通りである。

  • 出産時に10,000シンガポールドル(約125万円)を支給
  • 1歳までにさらに10,000シンガポールドルを支給
  • 1歳から16歳まで毎年2,000シンガポールドルを支給
  • 17歳の年に教育費支援として10,000シンガポールドルを支給

有給育児休暇は、12歳以下の子どもがいる働く親の取得日数を現行の2〜6日から8〜12日に拡充する。子ども1人で年間8日、2人で10日、3人以上で12日が付与され、最長取得期間は現行の7か月半を維持する。法定子ども関連休暇の費用上限まで政府が負担し、雇用主の経済的負担を軽減する。

全日制保育料は、補助対象の月額料金を段階的に150シンガポールドル(約1万9千円)へ引き下げる。最終的に約2万円相当まで値下げし、30年以内に達成することを目指す。

財政・予算

これらの給付・保育料引き下げ策を実施するため、2024年度に子ども・家庭支援関連施策へ約70億シンガポールドルが投じられる計画である。

作業部会の設置と目的

2026年4月29日に省庁横断型作業部会「Marriage and Parenthood Reset Workgroup」が設置され、インドラニー・ラジャー首相府相が議長を務める。

目的は以下の項目にわたる支援強化と社会意識の改革である。

  • 経済的負担の軽減
  • ワークライフバランスの向上
  • 住宅支援の拡充
  • 医療分野での支援
  • 教育分野での支援

期待される効果と政府の見解

シンガポール政府は少子化を「国家の存続に関わる問題」と位置付け、早期対処の必要性を公式に訴えている。直接給付と保育料の引き下げにより子育てコストが軽減され、出生意欲の喚起が期待される。加えて、有給育児休暇の拡充は働く親のワークライフバランス改善を図り、労働市場への影響を緩和することを目的とする。長期的には出生率の回復と人口構造の安定化を目指すが、政策だけで出生数が増える保証はないとの認識が示されている。