災害時の水供給課題
災害時に断水が発生すると、飲料水や生活用水が不足する恐れがある。
平成28年熊本地震では、井戸水が代替水源として利用された。
災害応急用井戸の制度概要
災害応急用井戸は、災害発生時に被災地住民へ安全な生活用水を迅速に提供することを目的として設計されている。
この制度は、非常時の生活を支える重要な役割を担う。
災害時協力井戸の定義と登録要件
災害時協力井戸は、個人・企業等が所有する井戸を事前に登録する制度である。
登録された井戸は、災害時に無償で近隣住民等に提供できることが要件となる。
ガイドラインの概要
災害時地下水利用ガイドラインは、内閣官房水循環政策本部事務局が2025年3月17日に公表した。
目的は、災害直後の生活用水代替源として地下水活用を推進することである。
- 登録制度の考え方
- 情報共有の意義
- 配置場所の基準
- 既設・新設井戸の取扱い
- 工事の流れ
- 国庫補助制度
導入・実装状況
多くの自治体で災害応急用井戸の導入が進んでいる。
埼玉県内の市町村(令和4年9月調べ)では、災害用井戸が2,372本、災害時協力井戸が2,135本登録されている。
全国の自治体の多くは、地域防災計画に地下水を代替水源として活用する旨を記載している。
しかし、実効的な自治体主導の取組は少数である。そのため、鳥羽市では井戸の調査・申請・検査を町内会・自治会が実施し、業務を効率化している。
同市は、災害時に詳細な位置図等を公表し、所有者のプライバシー保護と登録促進を図っている。
七尾市は、災害用井戸活用事例を説明会で紹介し、有用性を強調した。
運用・支援体制
市町村は、県の負担で災害用井戸の水質検査を実施し、案内板を設置している。
公式ホームページで情報を周知し、防災訓練や講演会で登録を呼びかけている。
水質検査費用の一部に補助金が交付され、検査の周知・斡旋が行われている。
自主防災会代表者にも登録が呼びかけられている。
ガイドラインの運用指針では、登録時に現地確認を行う。
確認後、情報を水道部局等と共有する。
共有した情報はデジタル地図で管理することが求められる。
緊急点検の実施が推奨され、電動・手動切替可能なポンプで停電対策が示されている。
井戸は主に生活用水として利用されるが、水質が確保できれば飲用も可能である。その結果、飲用時は厚生労働省「飲用井戸等衛生対策要領」に基づく水質検査が推奨される。
効果・メリット
遠藤崇浩座長は、災害応急用井戸のメリットを「早い」「安い」「広い」と評価した。
24時間開放が可能である。
鳥羽市と七尾市の事例では、個人・企業所有の井戸や湧水が自発的に開放され、代替水源としての有用性が確認された。
今後の課題と展望
齋藤博之事務局長は、ガイドラインが地方自治体にとって業務手順等を整理したものであり、地域防災力向上に資すると期待している。
今後の課題は以下の通りである。
- 実効的な自治体主導取組の拡充
- 登録情報のデジタル化と共有体制の整備
- 国庫補助制度の活用促進