2026/08/21

新鹿沼駅作業員4死亡 見張り不全で特急衝突事故の警鐘


事故概要

2026年8月20日午前10時45分頃、栃木県鹿沼市鳥居跡町の東武日光線新鹿沼駅構内で特急列車と作業員が衝突し、作業員4名が死亡した。事故当日夜に東京で記者会見が開かれ、事故の概要と謝罪が表明された。直接的原因は「作業員の退避過程で何らかのトラブルがあった」こととみられ、現在調査が進められている。

被害者と作業員の配置

死亡した作業員は以下の4名である。

  • 石川一芳(67歳、宇都宮市在住)
  • 渡辺利彦(65歳)
  • 大毛茂信(53歳、栃木県日光市手岡在住)
  • 佐藤和也(54歳、日光市木和田島在住)

全員が搬送先の病院で死亡が確認された。除草剤散布作業に従事していた作業員は計7名(別情報では10名)であり、うち4名が死亡した。石川氏はホーム上に、残り3名は列車の下にいた。乗客・乗務員約50名に負傷者はいなかった。

列車情報と運行への影響

衝突した特急列車は6両編成の「スペーシアX2号」上り(浅草行き)で、約時速52kmで減速しながら駅に進入した。

列車は黄色旗合図を受け、警笛で応答したが、急ブレーキでも停車できずに衝突した。

この事故により東武日光線新栃木―下今市間上下線は約4時間半運転を見合わせ、午後3時20分頃に再開した。事故当日は33本の列車が運休し、約2,600名の乗客に影響が及んだ。

見張り体制と指摘された問題点

通常、線路上の作業時には作業員のほかに見張り員を配置し、列車接近を目視で確認し笛等で退避指示を行う。退避完了は旗で運転士に伝えるリレー体制が採用され、複数の確認手順が取られる。

事故当日の見張り員配置は以下のとおりである。

  • 上り線見張りは本来2名で実施すべきであったが、1名が作業員と意思疎通できなかった。
  • 別の見張り員は作業現場から約80メートル手前に配置され、黄色の旗で「退避完了」の合図を列車に送った。
  • 中継見張員は作業現場から約315メートル手前(踏切付近)に配置予定だったが、列車見張り員との意思疎通ができていなかった可能性が指摘されている。

指摘された問題点は、見張り員同士の意思疎通不全により正確な退避合図が伝わらなかったこと、進入可の合図が誤って送られた可能性があること、旧ホームが下部に退避スペースを持たず視認性が低いカーブ区間であったことの三点である。

捜査と鉄道会社の対応

栃木県鹿沼警察署が業務上過失致死の疑いを含めて事故詳細を調査し、運輸安全委員会が鉄道事故調査官を派遣して現地調査を実施した。東武鉄道の鈴木孝郎事業本部長は記者会見で謝罪し、原因究明と再発防止策の徹底を表明した。関係者への事情聴取は実施中であるが、全員が警察の聴取に応じているとは限らないと説明された。

法規・過去事例と安全対策

労働安全衛生規則第554条は線路上・付近での作業に監視人(見張り員)または監視装置の設置を義務付けている。国土交通省は1999年のJR貨物線事故以降、線路作業時の列車接近把握を徹底するよう通達している。

技術的安全対策として、赤外線センサー、レーザー、AIカメラ等の活用例が挙げられ、JR東日本は作業員全員が無線で受信できる警告機を装着している。

過去の類似事故は以下のとおりである。

  • 1999年2月21日:JR貨物線(大崎~恵比寿)で作業員5名が臨時列車と衝突し死亡。以後「線路閉鎖」体制が基本となった。
  • 2006年:JR伯備線で保線区員5名が死亡・負傷。
  • 2026年3月:香川県で保線工事中の作業員が快速電車と衝突し死亡。

鉄道関係者は「運行時間中の線路立ち入りは避けるべき」とコメントし、運輸安全委員会は「基本的な安全確認・情報共有の不十分さ」が事故要因として指摘されるケースが多数あると報告している。