2026/08/21

2026上半期中国不動産危機:価格急落と政策転換


2026年1〜7月の不動産市場統計

中国国家統計局は2026年1〜7月のデータを公表した。開発投資額は前年同期比で19.2%減少した。資金調達額は20.3%減少した。外国資金流入は77.3%減少した。住宅ローン総額は23.5%減少した。7月の数値はさらに悪化した。

販売額・価格・在庫の推移

不動産販売総額は2021年の18兆元から、2022年は13兆元、2023年は11兆元、2024年は約9兆元へと減少した。

住宅価格は全体で20〜30%下落した。北京・上海など一部都市ではピーク時の約半値となっている。

新築住宅価格は年率で下落し、投資は二桁台のマイナス成長を示した。

住宅在庫は約6,000万戸で、回転率が低下し、三・四線都市で過剰供給が顕在化している。

不動産負債は推計で約2,000兆円に上る。

歴史的背景と投機要因

  • 1990年代後半に個人住宅売買が解禁され、固定資産税・相続税が設定されなかった。
  • 富裕層の投機的購入が急増し、住宅価格が急騰した。
  • 2000年代以降は急速な都市化、低金利、地方政府の土地売却依存が価格上昇を支えた。

政策的抑制の経緯

  • 2010〜2011年に住宅ローン条件が厳格化され、3軒目以降のローンが禁止された。
  • 2016年に習近平国家主席が「住宅は住むため」と宣言し、価格上限を設定した。
  • 2020年のCOVID‑19により取引が激減し、住宅着工・販売が大幅に落ち込んだ。
  • 同年夏に不動産開発企業への融資規制が導入され、建設中断が広がった。

中央政府の金融・土地政策

  • 2020年8月に「三道紅線」基準を導入した。基準は以下の3点で構成される。
    • 資産負債比率70%未満
    • 純負債資本倍率100%未満
    • 短期負債対現金比率100%以上
    この基準は高レバレッジ企業への新規融資を制限した。
  • 2024年1月に優良デベロッパー向けのホワイトリスト制度で資金繰り支援を開始した。
  • 2024年5月の低金利融資枠は全体の4%しか利用されず、効果は限定的であった。
  • 同年1月に恒大集団に清算命令が出され、約48兆円の負債が公表された。

地方政府の支援策

  • 地方政府は中央の金融制限下で、債券発行枠を拡大し、鉄鋼・EV・バッテリー分野へ補助金を提供した。
  • 住宅在庫買い取り策により未販売物件を公営住宅化した。

主要デベロッパーの金融リスク

  • 恒大集団は2021年12月にデフォルトと判定された。株価は2021年後半の25.80HKDから2024年12月には0.16HKDへ急落し、2024年8月に香港証券取引所で上場廃止された。2021〜2022年に約16兆円の赤字を計上した。
  • 碧桂園は2023年に流動性危機に陥り、2024年上半期の純損失は100〜120億人民元である。2024年2月に香港裁判所で清算訴訟が提起され、4月に決算遅延で株式取引が停止された。
  • 万科企業は2024年上半期に同額(100〜120億人民元)の純損失を記録した。
  • 2024年にA株上場不動産企業33社が8四半期連続で純損失を計上した。
  • 大手金融機関の不動産関連貸出比率は低く、バランスシートの悪化は限定的である。

経済影響とマクロ展望

  • IMFは2026年4月に2026〜2030年の平均成長率を3.9%と予測した。米国は2.0%、G7は1.5%である。
  • 中国のGDPは2025年に日本の4.4倍、2030年に5.2倍と予測されている。
  • 2024年の消費者物価指数と生産者物価指数は下落し、景気は足踏み状態である。
  • 土地売却収入の減少は地方財政リスクを増大し、公共投資・債務返済リスクが高まっている。
  • 不動産関連インフラ(駅・空港等)は不良債権化し、資産価値が低下している。
  • 不動産産業は現在GDPの約15%を占めているが、比率は低下する見込みである。
  • 半導体、AI、データセンター等の好調産業は約30%が経済成長の牽引力となっている。
  • 中国不動産市場の低迷は日本の建築資材・鉄鋼輸出を減少させ、米国のデカップリング政策や日本の輸出規制強化がリスクに影響している。

課題と長期リスク

  • 信用損失が需要低下を招く。需要低下が価格下落とデベロッパーの資金繰り悪化を引き起こす負のループが形成されている。
  • 在庫調整には3年以上要すると予測され、2027年頃まで続く可能性がある。
  • 本格的な販売回復は2026年以降と見込まれるが、回復ペースは緩慢である。
  • 少子高齢化、都市化ペースの鈍化、大規模インフラ投資の減少が純住宅需要を縮小させている。
  • デレバレッジと景気下支えの両立が政策上のジレンマとなっている。
  • 大手デベロッパーのドル建て債務不履行は新興市場リスクプレミアムを上昇させるが、即時のグローバル金融危機への波及は限定的である。
  • IMFは中国不動産市場の構造的課題を指摘し、長期的見通しは不透明と評価している。