2026/08/21

2026ベトナム不法就労罰金、最大120万円で抑止


制度導入の背景

ベトナム政府は2023年9月10日から、海外で失踪・不法滞在・不法就労した者に対し、80,000,000~100,000,000ドン(約48~60万円)の罰金を科す制度を開始した。背景には、送出し費用が高額であることと、渡航後の失踪が相次いだことがある。無許可ブローカーにも最大約1,200,000円(約120万円)の罰金が適用され、違法に転職を促す行為も処罰対象となった。

政令283/2026/NĐ-CP の全体像

本制度は2026年7月15日に公布され、2026年9月10日に施行された政令283/2026/NĐ-CPに組み込まれた。全68条(6章)で構成され、旧政令12/2022/NĐ-CPの罰金規定を置き換えて労働・社会保険・海外就労分野の行政罰枠組みを再整備した。

  • 対象者
    • 海外で違法残留したベトナム人労働者
    • 違法募集・金銭徴収等を行う事業者・仲介者・ブローカー
    • 許可範囲外で営業する支店・事業所
  • 罰金額
    • 労働者本人・違法募集者・仲介者:80,000,000~100,000,000ドン(約48~60万円)
    • 許可外支店・事業所:180,000,000~200,000,000ドン(約108~120万円)
    • 法人が同一違反を行った場合は個人罰金額の2倍が原則
  • 追加処分
    • 違法に徴収した費用の返還と金利相当の利息支払い
    • 証拠物没収
    • 業務資格一時停止
    • 事業活動停止
    • 国内での外国人国外追放等
  • 処罰時効:労働・社会保険分野は1年、契約に基づく海外就労分野は2年

罰則対象の詳細

罰則は以下の三つのカテゴリに分けられる。

  • ベトナム人労働者:正当な事情なく海外で違法残留した場合に、上記と同額の罰金が科される。法人が関与した場合は罰金が2倍になる。
  • ブローカー・仲介者:無許可・無資格での募集案内、広告、相談、金銭徴収、労働者を騙して不法滞在させる行為、海外派遣ライセンス偽造、委任範囲外・期間外での派遣活動が対象。個人は同額、法人は2倍が適用され、支店等の重大違反では180,000,000~200,000,000ドンが科される。
  • 事業者・支店・事業所:許可範囲外で営業した場合に180,000,000~200,000,000ドンの罰金が科され、業務資格停止や事業停止等の追加処分が行われる。

国内外の影響と統計

送金費用は3~4億ドン(約180~240万円)が支払われるケースが報告されている。日本国内では以下の逮捕例がある。

  • 岩手県(2025年):ベトナム国籍男女13人が逮捕、うち11人が技能実習生として失踪。
  • 大阪府(2026年):ベトナム国籍男女7人が逮捕、在留期限超過で不法残留疑い。

出入国在留管理庁の2026年1月1日現在の統計は次のとおりである。

  • 本邦不法残留者総数:68,488人(前年比‑8.5%)
  • ベトナム人不法残留者:11,601人(前年比‑2,695人、最多国籍だが減少)
  • 資格別不法残留者:短期滞在 41,607人、技能実習 9,323人、特定活動 7,306人

技能実習生の失踪者数は以下のように推移している。

  • 令和5年(2023年):9,753人
  • 2025年:3,950人(約半減)
  • 2025年ベトナム人失踪者:2,593人(全体の65.6%)
  • 2026年7月時点の所在不明者:9,976人(過去5年累計46,071人)

送出し企業が法定基準を超えるサービス料や無断保証金を徴収した場合、最大2億ドンの罰金と日本向け送り出し業務停止が科される。企業は労働者への教育と緊急支援義務を負う。

時効延長と罰金額の意義

海外で違法残留した者が長期間帰国しないケースが増加したことを受け、処罰時効が2年に延長された。罰金額はベトナム国内平均年収(約50~60万円)に相当し、抑止効果を狙って設定されている。

今後の制度変更

2027年4月1日からは「育成就労制度」へ移行し、3年就業後に特定技能1号へ転換できるようになる。制度移行に合わせて罰則が強化される。

2026年4月1日に施行された政令59/2026/NĐ-CPは、国内で違反した外国人の国外追放手続きを定め、ベトナム政府は自国民の海外違反と国内外国人違反の双方に対し在留・労働管理を強化している。

国際的視点と実務執行

日本と韓国は失踪率の高い地域・職種に対し受け入れ枠制限を実施している。

罰金の執行はベトナム国内の行政機関が担当し、海外在住者への執行は帰国後が中心となる。在日ベトナム大使館・領事館は罰金納付受付と執行根拠となる調書作成を行う。