2026/08/22

米制裁で揺れるICCと日本金融機関、二次制裁リスク


制裁・法的枠組み

米国政府は2025年2月6日に大統領令14203を発令し、IEEPA(国家緊急経済権限法)に基づく特別経済権限で制裁を実施した。

  • 米国内資産の凍結
  • 米国金融システムへのアクセス遮断
  • 米入国禁止
  • 二次制裁条項により、米国が制裁対象者へサービス提供した外国企業・金融機関を新たに指定できる

2026年8月18日、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は赤根智子ICC所長と上級弁護士アブドゥライェ・セイをSDN(特別指定国民)リストに追加し、累計13名が対象となった。

米国法は日本国内で直接施行されないが、米国金融システムを経由する取引は制裁対象になる。米国は日本国内の銀行口座を直接凍結できない。

日本の金融機関は米国制裁に対して法的従属義務はなく、金融庁は電子決済事業者に対し制裁リスト照合とリスト更新時の再審査を求めている。

ICC組織・財務・背景

ICCは2002年に設立され、戦争犯罪・人道に対する罪等を裁く常設国際法廷である。正規職員は約1,000名で、そのうち日本人職員は十数名である。

2025年予算は1億9189万ユーロ、2026年要求額は1億9396万ユーロである。日本は最大分担金拠出国で、2025年の拠出比率は約14.6%(約45.6億円)である。

赤根智子所長は1980年に東京大学法学部を卒業し、1982年に検事任官した。東京高等検察庁・最高検察庁等で勤務し、国連研修所長等を歴任した。2018年3月11日にICC判事に就任し、2024年3月11日にICC所長に就任、任期は2027年3月10日までである。

ICCは赤根所長らの制裁に備え、職員給与を半年分前払いする措置を実施した。

ICC主任検察官カーン前氏は2025年2月13日にSDNリストに追加され、2025年12月18日には検察官・裁判官合わせて11名が制裁対象に指定された。複数のICC裁判官がスロベニア・ジョージア等で銀行口座凍結、クレジットカード停止の報道がある。

国内取引と金融機関の対応

赤根所長は約2年前から制裁の可能性を想定し、外務省と協議を継続している。

国内取引に応じた銀行は2行で、具体名は公表されていない。

三菱UFJ銀行を含むメガバンク3行は取引の有無について回答を控えている。

全国銀行協会は「各金融機関が個別に判断するためコメントできない」と声明した。

みずほ銀行の普通預金規定では、経済制裁関係法令に抵触する恐れがある取引は合理的に判断すれば取引停止または解約が可能である。

VISAカードは現時点で利用可能だが、将来的に停止の見通しがある。

赤根所長はツイートで「JCBだろうが何だろうがクレジットカードは一律で使えなくなる」と述べた。

日本クレジット協会の対応は以下の通りである。

  • 米国系カードブランドから利用停止要請があれば、個別契約に基づき停止できる。
  • 国内発行カードは口座登録が必須で、金融機関の判断が利用可否に影響する。

二次制裁リスク

米国の決済システムから排除される可能性により、日本の金融機関が赤根所長の口座やクレジットカードを凍結するリスクが指摘されている。

国際取引・決済技術課題

ユーロと円の決済は、ドル決済を経由(€↔︎$↔︎¥)すると利用できない。

オランダで取引を継続している銀行は1行で、同国の銀行カードは現在使用可能である。

JPYCは資金決済法上の「資金移動業者」に該当し、JPYC EXは本人確認が必須の公式プラットフォームである。

国際反応・外交

日本政府は外務報道官が「大変残念」と表明し、首相高市早苗も同様に「大変残念に思っている」とコメントした。

外務省は金融機関の口座・クレジットカード利用について「政府が答える立場ではなく、民間企業の判断に委ねられる」と述べた。

  • EU委員長フォンデアライエンはICCと赤根所長を「断固支持」するとツイートした。
  • オランダ外相は米国制裁を「認めない」と声明した。
  • スペイン外務省は米国制裁を「露骨な攻撃」と表明した。
  • 国連事務総長は米国の制裁政策に「深刻な懸念」を示した。
  • 国連サタースウェイト特別報告者は制裁を「報復」と批判した。
  • HRWのバルキース・ジャラー氏は制裁を「重大な犯罪に関与した米・イスラエル当局者を守る試み」と批判した。
  • 東京外国語大学の篠田英朗教授は「金融機関の独自判断は無責任で、政府は凍結しないよう要請すべき」と指摘し、外務報道官の談話が「弱すぎる」と評価した。
  • 識者は「日本が米国に追随するかが問われている問題」と述べている。

経済・金融リスク・展望

米ドルが基軸通貨であるため、米国制裁はドル決済経路に波及する。

ICCが制裁対象となった場合、日本からの分担金支払いが困難になる可能性が指摘されている。

米国の二次制裁により、日本の金融機関が取引停止・口座凍結の圧力を受ける恐れが継続的に指摘されている。