2026/08/22

本文0字・猫共著・5000人著者 学術論文の驚異裏側


特集概要

学術論文の意外な側面を紹介する特集が掲載されている。画像とともに、本文が全く書かれていない論文、猫が著者名に含まれる研究、著者が5000人以上いる超大型論文が取り上げられている。

本文0文字の論文

Robert Fiengo と Howard Lasnik の「On nonrecoverable deletion in syntax」は、タイトル・著者・所属機関のみで本文が0文字である。1972年に Linguistic Inquiry 第3巻第4号 528ページに掲載された。

Dennis Upper の「The unsuccessful self‑treatment of a case of “writer's block”」も本文が0文字である。1974年に Journal of Applied Behavior Analysis 第7巻第3号 497ページに掲載され、DOIは 10.1901/jaba.1974.7-497a である。行動心理学分野で有名で、引用回数は100回を超えている。査読コメントには「レモン汁とX線で慎重に調査したが欠陥なし」と評価された。

数学・物理学分野でも、本文が2文、あるいは2単語と図2つだけという極端に短い論文が時々存在する。0文字論文は上記2件のみで、追試を除く。

猫が著者の論文

F. D. C. Willard は1978年に La Recherche に単著で掲載し、世界初の猫(チェスター)共著者として認知された。1975年に Physical Review Letters でジャック・H・ヘザリングトンと共著したが、猫が共著者になるのは後の論文に限定されている。

特集では「ネコが書いた」ことが記載された論文が紹介されている。

超大型著者数の論文

著者リストが異常に長大になる例として、2015年の Physical Review Letters 論文「Combined Measurement of the Higgs Boson Mass in pp Collisions at √s = 7 and 8 TeV with the ATLAS and CMS Experiments」には5 154人の著者が列挙され、世界最多の著者数となっている。

全33ページの約7割(≈23ページ)が著者名・所属リストで構成され、ページ構成は次の通りである。

  • タイトル・本文:前9ページ(前半)。
  • 著者リスト:9ページ後半から24ページ。
  • 所属等注釈:25ページから33ページ、枝番は344まで設定。

Gemini 2.5 のプレプリントは3 295人の著者が掲載され、Google の AI チャットボット「Gemini 2.5」の仕組みをまとめた下書きとして公開された。

著者数の統計・傾向

  • 自然科学分野では、著者が1人の論文は稀である。
  • 5人以下の著者は「かなり少ない」部類に入る。
  • 10人以上の著者は「珍しくない」。
  • 100人以上の著者は「よくある」。
  • 1 000人以上の著者は「稀」であり、話題になる。

大量データ取得や巨大実験機器の使用により、著者が100人を超える論文が頻繁に出現する。Gemini 2.5 のようにプレプリントでも数千人規模の著者リストが形成されるケースが増加している。

大規模実験と著者数(ヒッグス質量測定例)

ヒッグス粒子の質量測定は、LHC(大型ハドロン衝突型加速器)で √s = 7〜8 TeV の陽子衝突データを取得して実施された。

ATLAS Collaboration と CMS Collaboration の2つの国際研究チームが独立した検出器でデータ取得・解析を行い、結果をクロスチェックした。両チームが同一の質量測定結果を得たことが共同発表の根拠となっている。

大量データ取得に伴う統計的性質により、偶然誤った結果が現れる可能性が高まる。2チームが独立検証することで結果の信頼性が確保された。

著者数は5 154人に達した。全33ページの約7割が著者情報で占められ、最後のページに所属枝番が344まで付与されている。

プレプリントとその役割

プレプリントは学術誌掲載前の下書きであり、近年はオープンアクセスやデータ共有など多様な目的で利用される。

Gemini 2.5 のプレプリントは3 295人の著者が掲載され、異常な著者数として注目された。プレプリントは正式掲載前の検証・フィードバックの場として機能し、著者リストの拡大を促すことがある。