御節供とおせち料理の起源
平安時代の宮中で行われた「御節供」は、節日を祝う行事として季節の変わり目に神へ供える習慣から発展した。奈良から平安時代にかけて実施された「節会」は邪気祓いと不老長寿を祈願する宮中行事である。
弥生時代に稲作が始まり、自然の恵みに感謝する風習が形成された。中国から伝わった「節」の概念が日本で「御節供」へと変容し、江戸時代に庶民へ広がって正月料理として定着した。明治以降に百貨店が重箱入りおせちを販売し、現在の形が確立した。
重箱・段重の構成
明治以降に「福を重ねる」「めでたさを重ねる」という縁起で重箱に詰める習慣が定着した。正式な形は四段重であるが、現代の一般的な形は三段重である。
- 壱の重:祝い肴・口取り(黒豆・数の子・田作り・かまぼこ・伊達巻・栗きんとん)。
- 弐の重:焼き物・酢の物(海老・鯛・ぶり・紅白なます・菊花かぶ)。
- 参の重:煮しめ(里芋・れんこん・ごぼう・こんにゃく・にんじん・たけのこ)。
- 与の重:控えの重(空にして「まだ福が入る余地」)。
海老の縁起と種類
海老は長寿・目出・生まれ変わり・めでたさの縁起がある。曲がった腰と長いひげは「腰が曲がるまで長生き」、目が突出する形は「目出たい(めでたい)」の語呂合わせ、脱皮は生まれ変わり・若返り、加熱で赤くなることは魔除け・祝いの色とされる。
平安時代の漢和辞書『和名類聚抄』に記載され、武将の祝膳にも使用された。
- 車えび。
- 伊勢えび。
- ぼたんえび。
- ブラックタイガー。
- バナメイえび。
- 赤えび。
- 甘えび。
- 桜えび。
- 芝えび。
ぶりの縁起と調理例
ぶりは立身出世・豊漁・家族の健やかな成長の縁起がある。成長段階で名前が変わる(関東:ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ、関西:ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ)ことから「出世魚」と呼ばれ、人間の出世・昇進と重ね合わせて縁起とされる。
平安貴族の「年魚」習慣が原型である。江戸時代に商人が商売繁盛の願いで普及した。冬が旬で脂の乗った寒ブリは「豊かな一年」の象徴である。
二の重の焼き物としては、ぶりの照り焼きが用いられる。調理例は、2 cm厚の切り身を4切れにし、醤油・みりん・酒・砂糖・生姜で焼く。
鮮度判定のポイントは、透明な目、青黒い背中、銀白の腹、赤いエラ、弾力ある身、ピンクの切り身である。
なますの起源と調理ポイント
古代中国の「膾(なます)」が日本に伝来し、江戸時代に酢の物として定着した。
紅白の配色は平和・めでたさ・家族の安定の縁起である。赤は太陽・喜び・生命力、白は清浄・魔除けとされる。大根の根張りは生活基盤の安定、にんじんの彩りは華やかさと解釈される。
- 比率:大根5 : 人参1。
- 切り方:長さ5〜6 cm、幅2〜3 mmの細切り。
- 調味:酢・砂糖・塩で約15分和える。
- 保存:冷蔵で約1週間、冷凍で約1か月(空気抜き・密閉必須)。
作業スケジュールと保存方法
作り始めは12月28日から30日が一般的である。12月28日は黒豆・昆布巻きなど長期保存が必要な品目を調理する。12月29日と30日はなます・煮しめを仕上げる。
12月29日は「苦」に通じるため、作業を28日と30日に分散させる人もいる。
- 冷蔵(10℃以下):2〜3日。
- 常温:1日以内。
- 冷凍(解凍前):1〜2か月。
- 手作り材料費:1〜2万円、調理期間:2〜3日。
- 通販・百貨店購入費:1〜5万円、注文のみで即日利用可。
子ども・一人暮らし向けの提案
子どもが食べやすいとされる食材は、甘味のある栗きんとん・伊達巻・かまぼこと、柔らかい里芋・花形にんじんである。黒豆が苦手な子には甘煮デザート化で提供できる。
一人暮らし向けには「祝い肴三種」(黒豆・数の子・田作り)だけでも正月気分を演出でき、コンビニ・スーパーの一人用おせちセットも利用可能である。
地域別のおせちの特徴
- 関東:甘めの味付け、田作りが三つ肴に含まれる。伊達巻が定番。年取り魚はサーモンが主流。
- 関西:薄味で素材の味を活かす。たたきごぼうが三つ肴に含まれる。棒鱈・にらみ鯛を使用。年取り魚はぶりが定番。
- 九州:がめ煮(筑前煮)が必須で、ぶりを重視する。
- 北海道:大晦日におせち開始し、氷頭なます(鮭の軟骨)を使用する。
- 沖縄:本土とは異なり豚肉中心(中身汁・ラフテー)。
出版情報
- 書名:けんたろ式“見るだけ”ことば雑学辞典。
- 発売日:2024年12月20日(KADOKAWA)。
- Amazon部門:雑学・クイズ、パズル・ゲームで1位獲得。
- 著者:けんたろ(国公立大学院卒、元営業マン、2024年11月時点でフォロワー8.7万人)。