業績と財務状況
2025年12月期に中国の主要太陽光パネル上場企業7社はすべて最終赤字に転落し、合計損失は最大で392億元(約8,900億円)である。
- 通威:最終赤字90〜100億元(前年70億元から拡大)
- TCL中環:赤字82〜96億元(前年98億元から減少)
- 隆基緑能:赤字60〜65億元(前年86億元から縮小)
- 晶澳太陽能:赤字45〜48億元(モジュール価格下落と保護主義的貿易障壁が主因)
- 愛旭:赤字12〜19億元(前年53億元から大幅改善)
- JinkoSolar・天合光能・Daqo New Energy:2025年に数十億元規模の赤字が確定
- Canadian Solar:2025年に小幅黒字(中国国内の過当競争から距離を置く戦略)
2025年上半期にLONGi、ジンコソーラー、トリナソーラー、JAソーラーの合計純損失は約110億元(約1,540億円)で、前年同期比約2.5倍に増加した。
同期間に5社(LONGi、トリナソーラー、ジンコソーラー、JAソーラー、通威)で約87,000人がリストラされ、従業員平均削減率は31%である。
2024年以降、40社以上が上場廃止、破産、または買収に至っている。
政策・規制環境
日本環境省は太陽光パネル購入補助を廃止し、意見公募で「支援の国内産業恩恵が限定的」という多数意見が示された。
中国政府は過去に固定価格買い取り、補助金、低利融資、地方政府の産業誘致を実施し、2025年のクリーンエネルギー産業規模は15.4兆元、GDP比は11.4%と評価されている。
2026年4月1日からは太陽光発電関連製品の輸出付加価値税(VAT)還付(13%)が完全に廃止された。
過剰生産抑制策として、新規生産設備投資の制限と品質基準の引き上げが検討されている。
米国は2024年に太陽電池関税率を25%から50%へ引き上げ、EUは外国補助金規則を強化し、2026年3月4日に欧州産業加速法(IAA)を公布、欧州内のソーラーインバーター・セルは欧州製に限定された。
米国UFLPA(2022‑2025)は約36.9億ドル相当、1.68万件以上の輸入貨物を拘束・審査している。
投資規模と財務指標
2011年以降、太陽光供給能力への投資は500億ドルを超えている。
中国地方政府債務は2025年末時点で約54.82兆元(約1,100兆円)で、前年比15%増加した。
技術・製品
中国メーカーはポリシリコンからインゴット、ウエハー、セル、モジュールまでの完全垂直統合を実現している。
N型セルと高効率モジュールへの投資は継続され、旧ラインを停止せずに新設備が増設されている。
- TOPCon:変換効率24.5‑26.0%、温度係数‑0.30%/℃、両面発電率80‑85%
- HJT:変換効率25.5‑27.5%、温度係数‑0.26%/℃、両面発電率90%以上
2025年のモジュール価格は約9セント/W(FOB中国≈0.087 USD/W)で、製造コストを下回っている。
2024年末の価格は2022年初めに比べ約70%下落している。
銀価格は2026年初頭に80 USD/ozから95.8 USD/ozへ上昇し、前年比約130%増加した。
銀のコスト比率は2023年の約3%から2026年には17‑30%に上昇した。LONGiは2026年第2四半期から銀フリーセルの大量生産を開始した。
AIKO商用モジュールの変換効率は24.8%である。技術ロードマップにはTOPCon、HJT、将来のペロブスカイト型が含まれる。
市場供給と需要のバランス
2024年に中国系統連系済み太陽光設備は886.66 GWで、同年新規追加は277.17 GWである。
2024年の世界需要は約270 GWである。2025年の国内製造能力は500 GWを超え、2025年1‑10月の生産量は514 GWで、前年同期比13.5%増加した。
IEAは中国が製造工程で80%超の世界シェアを持ち、2021年末の製造能力が需要を少なくとも100%上回っていると報告している。供給過剰により価格は原価割れ寸前にまで低下している。
競争環境と規制圧力
米国関税引き上げ、EU IAA・外国補助金規則、UFLPAにより中国製パネルの輸入が制限されている。
EUで使用される太陽光モジュール・セルの約94%が中国輸入に依存している。
欧米諸国は「ダンピング輸出」問題を根拠に関税・輸入規制を強化している。
企業別海外展開と戦略
- TCL中環はサウジ公共投資基金(PIF)と提携し、年産20 GWのウェハー工場建設を推進している。
- Trina Solarは2025年第1四半期からサウジに新工場を稼働させた。
- 海南鈞達新能源はオマーンで5 GW規模のN型セル工場を建設する計画を進めている。
- 北京光和前程科技は2025年12月9日に設立され、資本金30億元で通威が30.35%出資している。2026年1月に価格カルテル計画がSAMRにより禁止された。
- 通威は2026年2月24日に青海麗豪清能株式を100%取得し、総投資額730億元、計画生産能力75万トン、企業価値は100億元超である。
産業構造変化とリスク
供給過剰は業界全体での倒産リスクを顕在化させている。
財務基盤が弱い中堅メーカーは数年以内に市場退出する可能性が高く、財務基盤が強い巨大企業はTOPConやペロブスカイトへの投資余力を保持し、生存可能性が高いと評価されている。
日本の発電事業者は安価パネルに対する倒産リスク(長期保証・アフターサービス不在)を認識し、蓄電池やEMS統合によるレジリエンス重視の投資へシフトしている。
政策・規制の影響と将来シナリオ
日本環境省の補助廃止は国内産業への恩恵が限定的である。
EU IAAと米国UFLPAは中国製パネルの輸出を制限し、サプライチェーン再構築の圧力を増大させている。
中国政府の過剰生産抑制策(投資制限・品質基準強化)は市場期待に影響を与えている。
パネル価格の下落はシステムコストを大幅に低減し、エネルギー転換を加速させる要因となっている。
同時にメーカー倒産リスクは長期保証への不安を招き、業界は生産削減と需給バランスの改善が不可欠である。
技術転換(PERC→TOPCon→HJT→ペロブスカイト)は旧型在庫の処分を加速し、価格下落をさらに促進している。
日本と欧州は国内製造・調達比率の向上を目指す政策を強化し、サプライチェーンの多様化が進行している。
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