ゾウの生態と行動
ゾウは群れで生活し、鼻・耳・尾・体のボディーランゲージと声で通信する。
鼻は触覚と嗅覚の中心であり、ヤコブソン器官(鋤鼻器)で微量の臭いを感知・分析し、他個体の居場所・食物・感情状態を把握できる。長距離通信においては、臭いを嗅ぎながら音源へ移動する行動が観察されている。
耳は興奮や喜びの表現に使用され、炎天下では体温調節に役立つ。
尾は視界外の探索と近距離個体の距離情報取得に利用される。
基本的に静かな動物であるが、異常音や脅威時に大声・ゴロゴロ音・キーキー音を発する。
オスと子ゾウの特徴
オスゾウはメスの発情期を嗅覚で識別できる。
子ゾウは母を見失うと大声で鳴く。
誕生直後から訓練が開始され、約1歳で足に鎖を付ける訓練が行われる。
コミュニケーション手段
超低周波不可聴音(Infrasound)は遠距離通信に利用できるとされるが、2003年の研究ではその重要性は低いと結論付けられている。
音の発生音圧は85〜90デシベル、周波数は14〜24ヘルツで、最大約2.5kmまで伝わる。
ラッパ音(トランペット音)は不安や攻撃時に使用される。
睡眠と生活リズム
ゾウは1日8時間の睡眠サイクルに従わず、2日で約4〜5時間の睡眠をとる。
睡眠は軽い休息とレム睡眠に分かれ、レム睡眠は約5日ごとに発生し、横たわって全身が弛緩し、いびきが観察される。
環境(熱帯雨林・サバンナ)や捕食者の有無により睡眠時間が変動する。
立ったまま眠る際は木や岩に寄りかかり警戒を維持し、しゃがむと体重を前後脚に分散させる。
子象は大人より長く深く眠り、成人雌と家長が見守りながら休ませる。
木下サーカスの飼育と調教
使用動物はアジアゾウ2頭とポニーのみで、アジアゾウはラオスから最長6年の短期貸与であり、2025年に返却義務がある。
ゾウ舎は長さ10.5 m、幅2.45 m、高さ2.45 mのコンテナで構成され、2頭は足枷で拘束される。
公演後は限られたバックヤードに収容し、記念撮影は1回800円で提供され、足枷が付いている。
調教師は観察力・決断力・厳格さが必要とされ、手鉤や鞭の使用は個人判断に依存する。
調教プログラムは約1週間で、若い野生ゾウは木枠に縛り手鉤で叩かれることがある。
子ゾウは誕生数日で訓練が開始され、約1歳で足に鎖を付け、正しい行動にはリンゴ等のご褒美が与えられ、違反時は手鉤・鞭で叩かれる。
サーカス全般の問題点
- 長時間の狭い檻やトレーラー飼育が心理的ストレスを生じさせ、異常行動・自傷・無気力が観察される。
- 鞭、電気棒、食事制限、隔離などの調教手段が歴史的に使用され、完全廃止されていないケースがある。
- 足枷・鎖での拘束が特例的に許可されている自治体がある。
法規制と社会的議論
- アジアゾウはCITES付属書Ⅰの絶滅危惧種であり、商業取引は禁止される。短期展示は最長6年まで許可される。
- 日本の動物愛護管理法はサーカスでの動物使用を直接規制せず、基準が曖昧である。移動サーカスの監視体制が不十分と指摘され、木下サーカスの飼育施設は二重扉義務が守られていないとされる。
- オーストリア、ベルギー、フランス等の欧州諸国やイギリス・シンガポール・インドはサーカスでの野生動物使用を禁止または段階的に禁止している。
- 米国は州・都市レベルで規制が分散している。
研究と音声データ
- サセックス大学とBrighton & Amboseli Elephant Research Project(2003年)の研究は、超低周波音がゾウにとって重要でないと結論付けた。
- ケニヤ・アンボセリ国立公園での録音と再生実験により、鼻で臭いを嗅ぎながら音源へ移動する行動が確認された。
- 超低周波音の周波は体格に起因し、交信には使用されていない。
- ゾウが発生できる音は85〜90デシベル、14〜24ヘルツである。人間の聴覚範囲は20〜20,000ヘルツであり、ゾウ音は人間の会話音より大きく数キロメートル伝わる。
環境・健康・倫理的課題
- 市原ぞうの国で6頭中2頭が死亡し、健康不良が頻発している。
- 飼育下のゾウは野生個体と異なる睡眠パターンやストレス反応を示す。
- 東南アジアの慣行(パジャーン)では子象を痛みと暴力で服従させる手法が存在する。
- 動物解放団体や専門家はサーカス動物の異常行動を繰り返し報告し、改善を求めている。