産業規模と供給過剰
2024年末の系統連系済み太陽光発電設備は886.66 GWで、同年に277.17 GWが新規に追加された。
2024年の世界需要は約270 GWであるのに対し、国内の製造能力は500 GWを超えている。
2025年1〜10月の中国産パネル生産量は514 GWで、前年同期比13.5%増加した。
この生産量は2025年の世界需要の2倍以上に相当し、供給余剰が継続している。
主要企業の業績
2025年12月期決算で上場企業7社すべてが最終赤字に転換し、合計損失は最大392億元(約8,900億円)となった。
- 通威:赤字90〜100億元(前年70億元)
- TCL中環:赤字82〜96億元(前年約98億元)
- 隆基緑能:赤字60〜65億元(前年約86億元)
- 晶澳太陽能:赤字45〜48億元
- 愛旭:赤字12〜19億元(前年約53億元)
- Canadian Solar:稼働率52%で小幅黒字
2024年第1四半期まで黒字を維持していた企業も、2025年には全社が赤字へ転換した。
投資額と地方政府の支援
2011年以降の新規太陽光パネル供給能力への投資総額は500億ドル超である。
地方政府は工場用地、低利融資、電力料金優遇、税優遇により過剰投資を助長した。
2025年末の地方政府債務は前年比15%増の約54.82兆元(約1,100兆円)である。
中国政府は2025年末までにクリーンエネルギー関連産業規模を15.4兆元、GDPの11.4%と見込んでいる。
資本構造と規制介入
北京光和前程科技は2025年12月9日に設立され、資本金は30億元である。
通威は同社に出資比率30.35%で参加し、ポリシリコン市場約95%シェアの企業が出資した。
2026年1月、国家市場監督管理総局は同社の価格カルテル計画を独占禁止法違反として全面停止命令を出した。
2026年2月24日、通威は総投資730億元、計画生産能力75万トンの青海麗豪清能を100%取得し、企業価値は100億元超と評価された。
パネル価格と材料コスト
2024年末のモジュール価格は1 Wあたり約9セント(FOB中国価格≈$0.087/W)で、2022年初め比約70%下落した。
2025年に価格は底打ちし、同水準が維持された。
2026年4月1日のVAT還付廃止により、モジュール価格は$0.0998/Wから$0.1088/Wへ上昇圧力がかかる。
2026年初頭の銀価格は1オンス80 $から95.80 $へ上昇し、増加率は130%である。
銀のモジュール製造コスト比率は2023年約3%から2026年は17%〜30%に上昇することが予測されている。
代替技術と効率向上
バックコンタクト(BC)技術においてAIKOは商用モジュールで変換効率24.8%を達成し、銀使用量を大幅に削減した。
LONGiは2026年第2四半期から銀をベースメタルに完全置換したセルの大量生産を開始した。
JinkoSolarは銅ベースパネルへの大規模移行を示唆した。
TOPCon技術は大量の銀使用を前提としており、銀価格高騰がコスト競争力を低下させる。
世界シェアと貿易政策
IEAは2021年末時点で世界のウエハー・セル・モジュール製造能力が需要の少なくとも100%上回っていたと報告した。
同報告は太陽光パネル製造工程で中国が80%以上の世界シェアを保有していると示した。
EUで使用される太陽光モジュール・セルの約94%が中国製に依存している。
米国は2024年に太陽電池関税率を25%から50%に引き上げた。
EUは2026年3月4日に産業加速法(IAA)を施行し、EU/EEA内製造のインバーター・セル使用義務と、中国企業の出資比率上限を49%に設定した。
米国UFLPAは2022年6月施行後、2025年7月までに約36.9億ドル相当、16,755件以上の輸入貨物を拘束・審査した。
海外展開と投資
- TCL中環はサウジアラビア公共投資基金(PIF)と提携し、年産20 GW規模のウェハー工場建設を推進している。
- 天合光能(Trina Solar)はサウジアラビアに新工場を建設し、2025年第1四半期から稼働している。
- 海南鈞達新能源はオマーンに5 GW規模のN型太陽電池セル工場を建設中である。
使用済みパネル回収産業の将来展望
光明日報が2024年15日と2026年8月15日に報じた論文は、使用済み太陽光パネルの回収産業が2035年〜2040年に世界全体で黒字化すると結論した。
分析は複数モデルと1700以上の政策・技術組み合わせを定量分析した。
2060年の累積廃棄パネル量は2.97億〜4.20億トンと予測された。
回収資源(シリコン・銀等)の売却価値は上昇し、2060年に数千億ドル規模に達する可能性がある。
主要材料価格が高騰するシナリオでも、累積設置容量は1900 GW減少し、廃棄量は700万トン減少すると予測された。
廃棄パネルは高所得地域(欧米)から新興国(中国・インド)へ移行する傾向がある。
回収過程でシリコン・銀等の有用資源回収と、鉛・カドミウム等有害物質の環境リスクが重要課題となる。
各国の設置状況・技術水準・経済レベルの違いから、単一ルールでは対応が困難であり、地域別の細やかな管理が必要である。
政策・規制の現状
過剰生産抑制策として新規設備投資制限と品質基準引き上げが検討されている。
2026年4月1日に太陽光発電関連製品の輸出増加値税(VAT)還付措置(率13%→9%)が完全廃止された。目的は過剰生産整理と欧米からの補助金批判回避とされている。
産業政策で太陽電池は先端技術分野と位置付けられ、大規模補助金が投入された。
国家市場監督管理総局は2026年1月に北京光和前程科技の価格カルテル計画を独占禁止法違反として全面停止命令した。
米国はトランプ政権下で中国製パネルへの高関税を維持・強化し、EUは2024年以降補助金規制調査と対抗措置を強化して中国製パネルへの輸入障壁を高めている。
課題とリスク
過剰生産に伴う価格下落により、太陽光発電導入コストは大幅に低下したが、メーカーは製造原価を下回る価格で販売し続け、赤字が拡大した。
地方政府債務は約54.82兆元に急増し、隠れ債務(LGFV)の処理が国家的最優先課題となっている。
パネル最終処分場のひっ迫や不法投棄、鉛・カドミウム等有害物質の流出が懸念されている。
回収産業の成長は環境リスク緩和に寄与する可能性があるが、技術・コスト面での課題が残る。
2025年12月に国家市場監督管理総局は秩序を守りコンプライアンスに適した価格競争を指示した。
2026年1月に工業情報化部は過剰投資による非理性的な低価格競争が市場秩序を乱すと指摘した。
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