2026/09/05

地方自治体が加速させる「MOU」締結。外国人材確保の最前線


外国人材確保に向けた地方自治体の危機感

地方自治体は、深刻な慢性的人手不足に直面しています。福井県では有効求人倍率が1.69倍(全国平均1.18倍)と極めて高く、鯖江市のメーカーでは海外受注の急増と日本人職人の高齢化により人材確保に苦慮しています。

背景には、円安の進行やアジア諸国の経済成長による雇用状況の改善があり、日本が無条件に選ばれない状況となっています。また、特定技能制度や2027年導入予定の「育成就労制度」による転籍可能化に伴い、地方から都市部への人材流出に対する強い危機感から、外国人材への依存度が高まっています。

協力覚書(MOU)の定義と目的

こうした状況を受け、地方自治体が海外政府・企業・大学などと特定分野での協力関係を確認し合う「協力覚書(MOU)」の締結が進んでいます。MOUは双方の署名により外交文書となります。

主な目的は以下の通りです。

  • 安定的な人材確保ルートの構築
  • 悪質な仲介業者(ブローカー)によるトラブルの防止
  • 地元企業へのマッチング促進と日本語教育の充実確約

具体的な取り組みとして、企業関係者の現地視察会や採用セミナー、就職イベントの実施、人材および受け入れ企業への助成金支出、送り出し国での言語・文化・習慣の事前学習推進が行われています。

MOUの締結状況と対象人材

47都道府県と20政令指定都市の4割超にあたる31自治体が締結済みであり、うち20道県が国とは別に海外政府機関と独自ルートを構築しています。また、愛知県、京都府、岡山県、熊本県の4府県が締結を検討中です。

締結数は増加傾向にあります。

  • 2019年:9自治体(相手先2カ国)
  • 2023年:20自治体(相手先7カ国・地域)
  • 2026年4月:相手先が11の国・地域に拡大予定

あわせて、対象となる人材として、技能実習・特定技能の人材(19自治体)、専門性のある高度人材(18自治体)、および将来的な確保を目的とした介護系専門学校の留学生が設定されています。

相手国の傾向と自治体別の動向

相手国別ではベトナムが25自治体と最多です。次いでインドネシア(7自治体)、インド(6自治体)、タイ(4自治体)、モンゴル(3自治体)となっています。

自治体別の主な動向は以下の通りです。

  • 茨城県:MOU締結相手が5カ国で全国最多
  • 群馬県:平成29年にベトナムと締結し、自治体で最速の事例となった
  • 福井県:介護・農業分野の不足解消のためタイ・インドネシア政府と締結
  • 千葉県:ベトナム人材の介護福祉士国家試験合格率の高さを評価し締結
  • 宮城県、山梨県、三重県:複数の相手国とルートを構築し、受け入れ先の多様化を推進
  • 愛知県、熊本県:それぞれフィリピン、インドネシアと交渉中

導入に向けた課題と今後の展望

自治体間で導入への判断は分かれています。

  • 推進派:宮崎県は他自治体に先んじた関係構築を、三重県は持続的な産業成長への多様な人材の不可欠性を、滋賀県は理系人材不足の解消を理由としています。
  • 慎重・断念派:徳島県は実効性が受け入れの後押しになるかを注視して未締結としています。秋田県は、高額費用を負担させるブローカーへの認識が相手国と相違したため未締結です。一部の自治体では、仲介業者の排除ができずルート構築を断念しています。

今後は、人材供給の中心が中国からベトナム・インドネシアへ移行しましたが、ベトナムの人材供給力に頭打ち感が出現しています。そのため、東南アジアからインドやネパールなどの南アジアへシフトし、安定確保に向けたルートの多国籍化が加速する見通しです。