2026/09/05

米イラン衝突の衝撃:中東の体制崩壊リスクと原油価格への影響


紛争の経緯と現状

米国は「力による平和」戦略に基づき、軍事力を外交手段として積極的に利用しています。その一環として、2025年6月の「12日間戦争」および2026年2月の作戦において、フォルドなどの核施設をGBU57爆弾で攻撃し、機能を劣化させました。2026年2月、トランプ政権は「戦争は数週間で終わる」として攻撃を開始し、2月28日には大規模軍事作戦(エピック・フューリー/ライオンズ・ロアー)を実施しました。この作戦により、イランの最高指導者ハメネイ師および政権幹部48人が殺害されました。なお、24日には丁重な要請による協議のため、13夜連続の大規模爆撃作戦が一時的に中止されています。

イランは、米国に主導権を握らせないため、軍事ドクトリンを「先制攻撃」へ公式に移行しました。差し迫った脅威がある場所で継続的に攻撃を実施しており、米・イスラエルへの報復として、湾岸諸国の米軍基地、石油施設、民間インフラを攻撃しました。あわせてホルムズ海峡を事実上封鎖し、タンカーの攻撃や停船を行っています。

軍事力と戦術

米国軍は中東に約13の基地と3〜4万人の兵士を配置し、ジェラルド・R・フォードおよびエイブラハム・リンカーンの空母を含む艦船12隻、F-35やF-22などの航空戦力を投入しています。戦術面では、サプライズ効果を最大化するために夜間や週末を選択しています。また、THAAD、パトリオット、ファランクス(CIWS)を配備し、フォースプロテクションを強化しています。

イラン軍(革命防衛隊含む)は、弾道ミサイルと無人機(ドローン)による攻撃を展開しています。保有するファテフ2型極超音速ミサイルのエンジンは北朝鮮から、固体燃料推進剤の化学物質は中国から調達しています。また、ホルムズ海峡での機雷敷設やロケット弾攻撃を実施しています。一方、ヒズボラ、フーシ派、イラク民兵などの代理勢力の能力が低下したことにより、前線防衛網は一部壊滅しています。

地政学的関係と経済的影響

地域勢力および同盟国の動向は以下の通りです。

  • イスラエル:米国と強固に連携し、イランのレジームチェンジ(体制転換)を目的としています。
  • サウジアラビア:イランと覇権争いを行うスンニ派主要国であり、緊張緩和を要望しつつ、民兵組織への攻撃で米国と共同行動しています。
  • ロシア:ウクライナ戦争で協力関係にありますが、米国との全面衝突を避けるため深入りしない姿勢です。
  • 中国:経済的影響力を最優先し、紛争から距離を置いています。

経済面では、世界の石油供給の20%が通過するホルムズ海峡の封鎖リスクにより、原油価格が1バレルあたり10〜20ドル上昇することが想定されています。原油の約8〜95%を中東に依存する日本にとって、代替輸入先の確保や国家備蓄の活用が急務となっており、海上自衛隊による船舶護衛が政策課題となっています。

リスクと今後の展望

米国政府は、ヨルダン基地および5カ国7カ所の基地への攻撃に対し、報復を拒否しています。国内では民主党が「違法な戦争」であると非難しており、地上侵攻への国民的支持が低いため、攻撃は空爆に限定されています。また、中東へのアセット集中により、西太平洋における対中抑止力が低下することが懸念されています。

イラン体制は、経済制裁による物価高や電力・水不足から反政府デモが発生しています。ハメネイ師死後の権力継承の混乱や、IRGCによる権力掌握といった体制崩壊のリスクを抱えています。なお、米国側はイランの軍実態を「張り子の虎」と評価しています。

将来のシナリオとしては、米・イスラエルが狙う体制崩壊と新政権への移行、代替勢力の不在によるリビアやイラクのような無政府状態への陥落、あるいは外交的解決の決裂による核兵器保有への加速というリスクが挙げられています。