2026/09/05

生活保護の医療扶助にメス!過剰受診の課題と改革への展望


生活保護の医療扶助費における現状と課題

2026年度当初予算において、生活保護の医療扶助費は約1兆8,341億円に達する見込みであり、生活保護費全体の約半分を占める規模となっています。受給者数は約200万人(人口の約1.6%)で、その50%超を65歳以上の高齢者が占めており、この高齢化に伴う受給者の増加が制度の持続可能性を脅かしています。

受給実態として、1人当たりの医療扶助費は一般国民の約2〜2.6倍に上ります。窓口負担がゼロであるため、軽微な症状での頻回受診やドクターショッピングなどの過剰受診傾向にあります。北海道では、夫婦で1年8ヶ月に約2億3,900万円の通院移送費(タクシー代)を公費受領した事例が報告されています。なお、日本全体の外来受診回数は年間12.1回であり、OECD平均の6.0回を大幅に超過しています。

現行制度の仕組みと厚生労働省の検討案

現在の医療扶助制度では、受給者は国民健康保険の被保険者資格を喪失しており、原則として指定医療機関のみを利用可能です。福祉事務所が発行する「生活保護医療券」を用いて、公費で医療費を賄う仕組みとなっています。

厚生労働省は、医療扶助を「費用支給」から「地域全体での健康管理・自立支援」へ転換させるため、2026年内をめどに以下の内容をとりまとめる計画です。

  • 外来受診基準の明確化と、紹介状の原則必須化。
  • 受給者ごとに「日常的に通う病院」を決定し、それ以外の医療機関を受診する場合は主治医からの紹介状を必須とする。

関係機関による把握・是正策

財務省は、医療保険未加入による管理の困難さを問題視し、保険診療のレセプト審査などの仕組みを応用して過剰診療の把握と是正を推進する方針です。

医療提供側および専門職からは、以下の視点が示されています。

  • 日本医師会・日本歯科医師会:福祉事務所と主治医の連携ルート構築の急務。
  • 日本薬剤師会:お薬手帳やマイナ保険証の活用による重複投薬(ポリファーマシー)の防止。
  • 医療機関一般:頻回受診の背景として、不正請求や不必要な多剤投与、社会的入院の可能性を指摘。

自治体の福祉事務所では、レセプトデータ分析による重複受診の早期発見に加え、保健師、看護師、管理栄養士などの専門職を配置した専門的保健指導を実施しています。あわせて、正当な理由のない頻回受診者への行政指導や受診機関の指定措置を検討しています。

制度の根幹に関わる外部提言

実務的な是正策に加え、制度のあり方について以下の提言がなされています。

音喜多駿氏は、外来1回500円程度(月額上限1,500円)の「ワンコイン負担」を導入し、医療の主体的な選択を促すことを提言しています。負担増を避けるため、同額を生活扶助に上乗せすることを条件とし、透析、精神疾患、指定難病、妊産婦、子ども、救急搬送は対象外とします。また、医療提供側の不正請求や不適切診療への対策を同時並行で進めるべきとしています。

学識経験者は、統計的データを用いた科学的な効果検証の重要性と、孤立や経済的困窮などの社会的要因に対する「福祉的アプローチ」との一体化を求めています。

魏徴X氏は、医療をリスク別に区分して改革することを提案しています。

  • 低リスク(風邪等):少額自己負担、通院頻度制限、リフィル処方箋の原則義務化(日本の利用率0.07%に対し、米国は70%超)。
  • 高リスク(がん・心疾患等):アクセスを維持しつつ、第三者委員会による適応基準を策定。

この提案は、受給者のスティグマ化を防ぐため、国民全体への適用を原則としています。