2026/09/05

世界の形が変わる?国連が「イコールアース図法」の普及を決議


国連総会による「イコールアース図法」普及の決議

2026年9月4日、国連総会において「イコールアース図法」の普及と奨励を促す決議が採択されました。採択結果は、賛成164カ国(日本含む)、反対1カ国(米国)、棄権6カ国(ウクライナ等)となりました。

本決議は法的な拘束力を持たず、加盟国や国際機関に遵守の義務はありませんが、加盟国、国際機関、およびデジタル地図を扱うIT企業への採用が推奨されています。

決議を主導した勢力と社会運動

本決議案は、トーゴのロベール・ドゥセ外相が主導的に提出しました。ドゥセ外相は、地図による世界認識の修正が、アフリカの経済的潜在力への正しい理解につながると主張しています。

アフリカ連合(AU)は、植民地時代の遺産であるメルカトル図法による「認知的不公正」を是正し、イメージを再構築することを目的としています。2025年8月からイコールアース図法の採用を国際社会に呼びかけ、2026年2月には加盟国および教育課程の見直し方針を採択しました。

また、アフリカの市民団体(Africa No FilterおよびSpeak Up Africa)は、「Correct The Map」キャンペーンを展開し、各国政府や教育機関に面積を正しく保つ地図の採用を要求しています。

図法の特性と比較

メルカトル図法

1569年にゲラルドゥス・メルカトルが考案した正角円筒図法です。角度と方位が正確(正角性)であり、直線で航路を表現できるため、航海や道路案内に適しています。一方で、高緯度ほど面積が拡大し、低緯度が相対的に小さく描かれる面積の歪みがあります。

この歪みの例として、実際にはアフリカ大陸がグリーンランドの約14倍の面積であるにもかかわらず、地図上ではほぼ同等に見える点や、北米、欧州、ロシアなどが不相応に誇張して表示される点が挙げられます。現在は、データ管理が容易で動作が軽い「Webメルカトル」として、Googleマップ(平面表示時)などの多くの地図アプリで採用されています。

イコールアース図法

2018年に開発された正積擬円筒図法です。世界全体の面積比を正確に保ちつつ、陸地の形状の歪みを抑えているのが特徴です。世界全体の面積比較、統計地図、人口分布図、教育現場での規模感の把握に適しています。NASAゴダード宇宙科学研究所の気候データ可視化や、GISソフトのSISでの表示投影法として採用されています。

その他の図法

このほか、中立性の象徴として国連旗に採用されている正距方位図法(中心点からの距離と方位が正確)や、日本の学校教育で使い分けられてきたモルワイデ図法・グード図法などの正積図法があります。

各国の反応と主張

唯一の反対票を投じた米国は、以下の理由から本決議を国際平和の実現に資さない政治的な運動であると批判しました。

  • 思想的側面:図法の見直しを「賠償」や「認知的正義」と結びつける「急進的なイデオロギー計画」であるという主張
  • 実利面:イコールアース図法では北米が小さく表示されるため

棄権したウクライナは、一部のイコールアース図法においてクリミア半島がウクライナ領ではないように表示されていることに懸念を示しました。

課題と今後の展望

教育面では、教科書などの地図がメルカトル図法からイコールアース図法へ差し替えられる可能性があります。これにより、地図の形状が特定の地域の重要性を低く見積もるなどの無意識の先入観を形成するリスクの解消が期待されます。

データ分析面では、GIS活用企業が図法の特性(面積の歪み)を理解せずに分析を行った場合、グローバル市場の規模評価や人口分布の可視化に偏りが生じます。これは分析上のリスクとなります。

技術的な制約として、球体である地球を平面にする際、「角度(方位)」と「面積」を同時に正しく表現することは不可能です。そのため、目的に応じた図法の使い分けが不可避となります。