策定の背景と経緯
2024年25日、札幌市は公共施設で開催されたアイヌ差別パネル展の問題を受け、差別的言動防止ガイドライン策定の中間報告を公表した。
報告では「アイヌ民族はもういない」等の表現を差別的言動と位置付け、同様の言動が行われた場合に利用不承認の可能性を明示した。
同時に差別的言動防止のための条例整備を検討し、2025年と2026年に専門部会を複数回開催する計画を示した。
差別的言動の定義と類型
「不当な差別的言動」は次の四要件で定義される。
- 対象がアイヌであることを理由にする。
- 差別的意識を助長・誘発する目的がある。
- 公然と行われる。
- アイヌの権利利益を侵害する。
この定義に基づき、類型は以下の三つに分類される。
- 第一類型:脅迫的言動(生命・身体・自由・名誉・財産への危害)。
- 第二類型:著しく侮蔑する言動(例:存在否定)。
- 第三類型:排除を煽動する言動。
判定はアイヌ施策推進法、ヘイトスピーチ解消法、発言の背景・文脈・趣旨、受け手の受容を総合的に考慮して行う。
利用制限の要件
利用制限が適用されるためには、次の二つの要件が満たされなければならない。
- 不当な差別的言動により、具体的に予測できる人権侵害の差し迫った危険があること。
- 同言動が紛争の可能性を高め、施設管理に支障が予測され、警備等でも防止できない特別事情があること。
利用制限の手段と審査プロセス
想定される利用制限の手段は、行政指導(警告)、条件付き承認、承認取消、そして不承認の四つである。
施設指定管理者は申請内容、活動歴、発信情報を確認し、必要に応じて申請者への聞き取りや第三者機関の意見を踏まえて可否を判断する。
実務上の課題と専門部会の指摘
上記の手段を実際に運用する際、専門部会は警告や条件付き承認の実効性に疑問を示した。
利用日に差別的言動が生じた場合、現場で即時に承認を取り消すことは実務上困難であると指摘された。
また、事前に承認された利用でも当日差別的言動が開始された場合の即時不承認は手続的に難しいとの評価が出された。
これらの課題に対応するため、2026年内に手引案を取りまとめ、同年度内に札幌市へ答申する方針が示されている。過去の裁判例や他自治体のガイドラインも参考に検討される。
パネル展事件と市の対応
2025年および2026年3月に地下歩行空間(チカホ)で開催されたパネル展では、「アイヌ民族はもういない」等の差別的主張が含まれていた。
アイヌ側は差別的内容として展示の中止を要請し、複数団体が市の許可を「差別容認・加担」と批判した。
札幌市は表現の自由との兼ね合いで規制に慎重な姿勢を示したが、混乱防止が困難な状況が生じたことを認め、個別事案については専門部会の議論が非公開であるため回答を差し控えると表明した。
関係者の発言
鈴木武市民生活部長は、不当な差別や言動を防止し、アイヌの誇りを尊重する社会実現を目的にガイドライン検討を進めていると述べた。パネル展が不承認に該当するかについては個別事案として答えられない旨を伝えた。
脇山秀課長(アイヌ施策課)は、アイヌ施策推進委員会の意見を踏まえ、専門部会での議論支援を事務局が行うと述べた。
今後の展望
ガイドラインは2026年内に最終策定され、2027年度から運用が開始される予定である。
実務上の課題に対処するため、具体的な手続き・運用マニュアルの整備が求められる。
判定基準の客観性確保と表現の自由とのバランスを保つため、継続的な協議が必要とされている。
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