2026/08/30

水不足が招く米価急落と農家対策・政府支援全貌


現場の水不足と気象状況

米農家の前田康経さんは、20年目の耕作で「ここまで水がない」と表明し、今年は収穫した稲の7割しか出荷できない見通しである。

渇水対策として、川から汲み上げた2トンの水を水田に撒いた。

夏季の出穂期から登熟期に大量の水が必要であり、水不足は生育停止、乳白米、しいなを引き起こし、品質低下につながっている。

伊佐市・周辺地域では、2023年8月の降水量が14.5 mmで平年の5.3 %にとどまり、27日までの累計降水量は約70 mmで平年の30 %に過ぎなかった。

十曽ダムの水位低下に伴い、取水制限や断水が報告されている。

薩摩川内市樋脇町の茶畑は高温と渇水により芽の伸びが悪化し、秋冬番茶の品質低下が懸念されている。

東北・北陸信越・近畿中国日本海側では1か月以上雨がほぼ降らず、太平洋高気圧が上昇気流を抑制し、フェーン現象が乾燥を助長した。

線状降水帯は一部で豪雨をもたらす一方、他方では降雨がゼロになるという地域的な不均衡を生じさせた。

乾燥によりカメムシ(アカスジカスミカメ・ミナミアオカメムシ)の卵が生存し、成虫が大量発生した結果、斑点米が増加し等級が低下した。

米価と市場動向

この深刻な水不足は、米の生産量と価格に直接的な影響を与えている。

農林水産省の相対取引価格は、令和7年10月に全銘柄平均37,058円(玄米60kg)であったが、令和8年6月には31,305円(前月比▲6 %)に低下し、令和8年7月は32,486円(前月比+4 %)で、ピーク比で約12 %低い水準となった。

令和8年7月の早期米概算金は前年産比で20〜40 %安く、玄米60kgは14,000〜21,600円であった。

  • 米穀安定供給確保支援機構のコスト指標は20,535円(玄米60kg)である。
  • 多くの産地で概算金がこの指標を下回っている。
  • 令和8年産新米の小売価格予測は5kgあたり約3,000円前後である。

令和8年6月末の民間在庫は194万トンで、前年同月比で+72万トン増加した。

令和7年産米の生産量は746.8万トンで前年度比+67.6万トンの増加があり、在庫は大幅に増えている。

農林水産省の基本指針(令和7年10月)は、令和8年産の生産量を711万トン、需要を694〜711万トンと見積もり、供給過剰を予測した。

令和9年6月末の民間在庫は215〜245万トンと見込まれ、適正水準を超えるとされている。

令和7年11月の平均小売価格は5kgあたり4,300円であったが、在庫増に伴い下落が続き、2026年5月〜7月のPOSデータでは5kg平均3,458円(前年同期比‑4 %)となり、一部スーパーでは5kgが3,000円未満で販売されている。

日本人1人当たりの米年間消費量は昭和37年度の118.3 kgから令和6年度には53.4 kgへ減少し、主食用米需要は年間約10万トンずつ減少している。

政策と支援策

市場の供給過剰と価格下落に対処するため、政府は多数の政策と支援策を実施している。

令和8年7月8日の改正食糧法成立により「生産調整」規定が削除され、需要に応じた生産が明文化された。

令和9年度の水田政策見直しでは、直接支払交付金が作物別支援へ転換され、5年水張り要件が廃止された。

  • 水田活用直接支払交付金(令和8年度予算)は2,612億円で、作物別単価は麦・大豆10a当り35,000円、加工用米20,000円、飼料用米55,000〜105,000円。
  • 収入保険(令和8年度予算)は290億円で、基準収入が90 %下回った場合に差額の90 %を上限として補填する。
  • ナラシ対策(令和8年度予算)は468億円で、標準収入額下回りの場合に差額の90 %を補填する。

令和7年7月30日に設置された渇水・高温対策本部は、31日に初会合を実施し、「水利施設管理強化事業」としてポンプ調達・番水管理の経費補助を開始した。

小泉進次郎農相は渇水対策補助事業の活用を指示した。

政府備蓄米の適正水準は約100万トン(2026年6月末時点)であり、令和7年3月〜6月末に約36万トンが放出され在庫は約60万トンに減少、2025年3月〜5月には約59万トンが放出された。

農家の対応と技術

支援策に基づき、農家は具体的な節水・保水技術を導入している。

畦塗りや水口板の点検・補修、間断灌漑が実施され、土壌保水力向上のために有機堆肥鋤き込みが行われている。

「水番」制度が復活し、用水路の取水時間と順番を地域で定めて限られた水を公平に配分している。

スマート農業の導入例として、自動操舵トラクターやドローンによる防除・施肥・水管理の自動化が増加している。

コスト圧迫要因は、肥料・農薬価格の国際情勢による上昇、トラクター・コンバインの燃料代高止まり、水路水量減少によるポンプ使用時の電気代増大、平均年齢69.2歳の高齢化と後継者不足である。

将来リスクと展望

現行の市場環境と対策を踏まえ、将来のリスクが議論されている。

小売価格が3,000円未満になると農家の再生産が困難である(筆者計算)。

価格が急落すると離農や作付面積の減少が生じ、供給不足リスクが高まる可能性がある。

2026年は備蓄米放出と民間在庫増により米余り状態に転換し、在庫が200万トン超になると米価は下落傾向になると予測されている。

高温登熟障害対策として、にこまる・つや姫・さがびといった耐熱品種の導入が拡大している。

直播栽培は労働を20 %削減しコストを10 %削減できるが、苗の不安定さと雑草管理が課題である。

2026年1月の米・米加工品輸出額は52億円で、前年同月比+35 %となっている。

輸入ミニマム・アクセス米(MA米)は77万トンが関税無税で一元輸入されている。