2026/09/04

自衛隊の人材不足は限界か?外国人登用の是非と安全保障のリスク


自衛隊における人材確保の現状

自衛隊は、少子高齢化による採用母数の減少や、職業としての不人気から、慢性的な人材確保難に直面しています。

採用実績は深刻な低迷を見せており、2022年度の任期制自衛官候補生は計画数の約4割と過去最低を記録しました。2023年度の自衛官候補生は、計画10,628人に対し実績3,221人と達成率は30%にとどまり、2024年度末の「士」の充足率は67.8%となっています。

職種別では、海上自衛隊において長期航海任務がネックとなり、艦艇乗員の採用難が継続しています。

採用基準の現状と外国人登用への判断

自衛隊・防衛省は、現在、日本国籍を有することを採用の絶対条件としています。

過去には、2022年末に海上自衛隊の艦艇乗員不足を補うための外国人充員案を検討したほか、2023年5月にはタトゥーがある候補生の採用検討意向を表明しました。また、給与・手当の見直し、勤務環境改善、女性登用の拡大などの策も講じられましたが、根本的な解決には至っていません。

こうした状況に対し、小泉進次郎防衛相は2026年9月4日の記者会見にて、外国人の登用について「考えていない」と明言しました。今いる隊員を優先すべきであるとし、現状の日本国籍限定の基準を維持する意向です。

あわせて、代替的な人材確保策として以下の取り組みを推進しています。

  • 現職隊員の処遇改善および業務の見直し
  • 人工知能(AI)の活用による省人化
  • 「退職自衛隊員・家族支援庁」(仮称)の新設

諸外国における外国人の軍登用事例

諸外国では、条件付きで外国籍者の入隊を認める制度が運用されています。

  • オーストラリア軍:ニュージーランド、米国、英国の特定国籍であり、かつ永住許可等の条件を満たせば入隊資格を認めています。
  • 米国軍:永住権(グリーンカード)保持者の入隊および軍務を通じた市民権取得制度を運用しています。なお、言語・医療特技保持者を採用するMANVIプログラムは、安全策不十分との評価により2016年後半に新規採用を凍結しました。2023年には、同プログラムを利用して潜入した中国スパイに懲役8年の判決が出ています。
  • フランス軍(外人部隊):1831年に創設され、約9,000人の兵力を保有しています。要員の約90%が欧州、スラブ、アジア、ラテンアメリカ等の外国籍であり、下士官以下で採用され、3年勤務後に帰化申請が可能です。

外国人登用に関する提言と課題

笹川平和財団は2026年9月2日、人口減少対策として外国人登用を検討すべきとする提言を提出しました。登用に関する具体的な提案内容は以下の通りです。

  • 登用範囲を、公権力の行使や国家意思形成に当たらない業務に限定する。
  • 国籍を同盟国・同志国に限定し、アクセス可能な秘密程度を検討するなど条件を厳格化する。

また、その他の提言として、重要施設の地下化・分散化による防衛産業施設の強靱化を挙げています。あわせて、国家公務員原則(日本国籍必須)が外国人登用検討の妨げとなっていると指摘しました。

一方で、外国人登用には以下のようなリスクと課題が存在します。

  • 安全保障上のリスク:他国からの影響、内部情報流出、忠誠義務の担保。
  • 実装へのハードル:公安調査庁や公安警察と連携した身元調査の必要性、公務員制度との整合性、国民感情への対応。
  • 優先順位の議論:先端技術による省人化、待遇改善、ハラスメント根絶などの内部環境整備が先決であるという視点。

有識者の黒江哲郎氏および山崎幸二氏は、安保関連3文書の改定に、必要な事項を盛り込むべきであると主張しています。