2026/08/28

政府備蓄米買い戻しと米価格高騰―食料安全保障の行方


政府の備蓄米買い戻し要請と方針

鈴木農林水産大臣は、5kgの備蓄米を1袋あたり3,500円で買い戻す可能性が報じられたことを受け、米価格を同水準に維持する方針を示した。また、備蓄米の早期買い戻しの必要性を公に認めた。

2024年6月11日、鈴木大臣は官邸首脳と面会し買い戻しを要請したが、物価高対策に逆行するとして官邸側が拒否した(朝日新聞)。同日、江藤元農水相も官邸首脳に同様の要請を行い、同様に応じられなかった。

高市早苗首相は、備蓄米買い戻し案が物価高対策に逆行すると指摘し、激怒した。

2024年8月19日、鈴木大臣は山形で「稲刈りが始まる前に備蓄米を買い戻したい」と発言し、8月末に作柄を見て買い戻しを検討すると表明した。

法令上、備蓄米は100万トンの確保が義務付けられている。昨年の米価対策放出により備蓄米は約30万トンに減少した。政府は供給不足が見込まれない環境下でのみ買い戻しを実施し、食料安全保障の観点から備蓄米の維持を不可欠と位置付けている。

米価格の高騰とリスク

2024年夏以降、5kgあたり5,000円台にまで米価格が高騰した(「令和の米騒動」)。高騰は「米離れ」や消費者の主食転換を加速させた。

消費者は5kg 3,000円を超える価格での購入を控える傾向がある。

現在の小売価格は5kgあたり3,200円前後であり、特売時は2,500円程度で取引されている。

新米在庫が市場に加わると米価格の急落が懸念される。一方、価格が過度に低下すると農家の離農が進む恐れがある。

在庫状況(民間・政府)

民間在庫は2024年6月末時点で243万トンに達し、過去最大規模となっている。適正在庫量は180万〜200万トンとされる。

政府備蓄米は目標の100万トンに対し、昨年の放出で30万トンまで減少した。放出された備蓄米約59万トンの早期買い戻しをJA等が要請している。

JA・流通の動向

  • JA全農いがた・JA全農あきたは2024年8月18日、コシヒカリ新米の概算前払い金(概算金)を玄米60kgあたり18,500円に設定した。前年約30,000円から約40%減少した。
  • 昨年産米は倉庫に山積みとなり、安価に放出された。
  • 新米の置き場不足により一部業者が投げ売りを開始し、価格下落を招いた。

専門家・学者の見解

  • 農業経済の専門家は、農家保護には高値維持だけでなく、消費者が継続購入できる価格との両立が必要と指摘した。
  • 宮城大学名誉教授の大泉一貫は、以下の点を指摘した。
    • 高額概算金が米農業の持続可能性を本当に高めるか再考が必要。
    • 全産転換した場合、年間約200万トンの米余剰が見込まれる。
    • 100万トンの備蓄米では大規模災害時に不足の可能性がある。
    • 放出時に東西で備蓄米倉庫数に差があった。

食料安全保障と今後の課題

米自給率が低いほど外交的リスクが高まると指摘されている。食料安全保障の観点から、備蓄米100万トンの維持が不可欠である。

今後の主要課題は、価格高止まりと消費者が受容できる価格帯のバランス、在庫の適正化、農家の収益確保である。