日本の火葬率と土葬の歴史的変遷
厚生労働省の資料によると、2000年代以降の日本の火葬率は99%以上である。
大正初期は30%台であり、1979年に火葬率は90%に達した。
火葬率の上昇は、第二次世界大戦後の都市化と火葬設備の急速な発達と関連している。
歴史的に土葬は集落全体で行われていた。
土葬の衰退要因は、地域のつながりの薄れ、火葬設備の急速な発達、都市部での土葬用地不足とされている。
土葬に関する法制度とリスク評価
「墓地、埋葬等に関する法律」では土葬は違法と規定されていない。
高知県宿毛市条例は墓穴の深さを地下2メートル以上に限定している。
土葬における遺体の腐敗過程では、体液・窒素化合物・病原体が土壌に浸透する。
日本の湿潤気候と高い地下水位により、地下水汚染リスクが高まる。
土葬希望を公表すると社会的混乱リスクがあるとの認識がある。
土葬が自然に受け入れられる社会へは「ゆっくりと」進むべきという意見が示された。
主要人物の見解と背景
信原幸弘(東京大学名誉教授、科学哲学、72歳)は、宗教上の理由ではなく「最もしっくりくる埋葬方法」として土葬を希望している。
約2年前に「野糞」実践者との対話で、自然循環思想に強く共感したことが土葬希望のきっかけとなっている。
希望を強く表明すると日本社会で混乱リスクがあると判断し、周囲に詳しく話さない。
堀江宗正(東京大学大学院教授)は、1,047人を対象にした死生観調査で、2019年の土葬希望者は14.2%、2024年は20.4%に増加したと報告している。
イスラム教徒は0.2%であり、土葬志向は宗教だけで説明できない。
増加背景として「家墓」の衰退、墓の継承負担、葬送の個人化を指摘している。
本山仁(葬祭会社代表)は、年間100〜150件の相談のうち半数以上が土葬に関するものであると述べ、墓地と許可があれば土葬は違法でないと説明している。
市川大了(大城寺住職)は、90代の多くがかつて土葬を経験し、火葬への転換は1965年頃から開始されたと説明している。
山野井英俊(「土葬の会」会長)は2001年に同会を発足させ、山梨県南アルプス市の天空霊園で約14人が埋葬され、約10人が埋葬予定であると報告している。
山形真紀(元埼玉県警検視官)は、東日本大震災時に約1,600体が仮埋葬された経験を共有している。
米国シアトルの企業は「有機還元葬」サービスを提供し、利用者は数千人規模である。
具体的なイベントと埋葬事例
2026年4月に東京都内で開催された「死」テーマのイベントは、6日間で延べ5,000人以上が参加した。
信原幸弘のトークセッションでは質問が途切れず、参加者から土葬への関心が示された。
天空霊園(山梨県南アルプス市)では、土葬により約14人が埋葬され、約10人が埋葬予定である。
International Conference on Death, Dying and Disposal(DDD)2025では、火葬がCO₂排出とエネルギー浪費につながる点が指摘された。火葬以外の遺体処理やビジネス可能性に関する多数の研究が報告された。
市場動向とニーズの変化
- 散骨、樹木葬、共同納骨への支持が拡大している。
- 堀江宗正の調査に基づく土葬希望者の増加が背景にある。
- 本山仁の報告によると、土葬関連の相談が全相談の半数以上を占めている。
- 「土葬の会」や天空霊園など、実際に埋葬を行う組織・場所が存在する。
- 米国シアトルの有機還元葬は数千人規模で利用されている。