2026/08/27

習近平が若者に農村労働呼びかけ 失業危機と歴史的背景


習近平国家主席の農村労働呼びかけ

2023年卒業生に対し「仕事がないなら袖をまくって農地に行け」と呼びかけた。

5月4日青年節前夜に大学生へ書簡を送り、田舎での実践を促した。

書簡では「より良い中国を作る」ために苦難に耐えるよう訴えた。

青年節当日には西部・農村・基層での奉仕を要請した。

この呼びかけは「共同富裕」政策目標の下で農業強化を強調する文脈で行われた。

政府と共産主義青少年団の施策

中国政府は2023年卒業の若者向けに農村教師求人を提示した。

同時に「Z世代が仕事を選り好みしている」というメッセージを拡散した。

歴史的な上山下郷運動を踏まえ、数千万人の都市青年を農村へ送る構想を示唆した。

共産主義青少年団は2023年3月に「袖をまくって農地に行く」ことを奨励し、同様の呼びかけを複数回実施した。

若者の現状と意識

多くの若者は都市部を離れ農村教師求人に魅力を感じていない。

ネット上では「自分の学位には価値がない」と自虐的ジョークが共有されている。

AI技術の進展により職が置き換えられ、失業リスクが増大している。

ソーシャルプラットフォーム上で失業不満が多数投稿されている。

2023年度の大学卒業者数は1158万人で過去最高となった。

16〜24歳の若者失業率は19.6%で過去最高約20%に達した。

高学歴・低所得層が増加し、都市部で潜在的な社会不安リスクが顕在化している。

農村部と労働市場の実態

農村部では若い女性が少なく、50代・60代の独身男性が多数を占める。

ウイグル、モンゴル、チベット等の少数民族が労働力として従事している。

耕作可能土地不足が指摘され、上山下郷運動は行き詰まりを示した。

農民工の平均月収は北京・沿海部で約4800元で、全国平均より約10%高い。

具体例は次のとおりである。

  • 包氏(46歳・内モンゴル出身)は月収5,000〜10,000元で、生活費800元を除く全額を家族へ送金していた。2022年5〜6月のゼロコロナ政策により無収入となり、借金14,000元以上と未払い給与約1万元を抱えている。居住は北京郊外の簡易宿泊所で家賃は450元、ワクチン未接種である。
  • 北京市郊外では9月中旬に数百人の農民工が集結し、労働者差配業者が「広場の花植え」200元/8時間や「道路の水まき」150元などの短期求人を呼び掛けた。

経済指標と国際環境

不動産バブル崩壊により家計資産は約18兆ドル(約2,900兆円)減少した。

Forbesはその規模が2008年リーマンショックを上回ると指摘した。

デフレ圧力が続き、消費割合は温家宝当時の39.8%からほぼ変わっていない。

中国の貯蓄総額は22兆ドル(約3,600兆円)で、日本GDPの4倍以上に相当する。

米国は中国輸入品に最大245%の関税を課した。

ゴールドマン・サックスは関税戦争で最大2,000万人の中国労働者が影響を受けると予測した。

長江・珠江デルタ地域の米向け輸出業者・製造業者の多くが操業停止に追い込まれている。

歴史的背景と現代の呼びかけ

毛沢東時代(1950〜1978)に実施された上山下郷・山へ行け・田舎へ行け運動では約1,600万人の青年が農村へ下放された。

目的は思想改造、都市農村格差解消、失業緩和、政治的脅威の排除である。

運動は1968年夏に開始し、約10年間続いて1978年に停止した。

文化大革命期に拡大し、紅衛兵統制失敗が背景にある。

ソン・ヨンイ教授は現代の呼びかけを「毛沢東時代の政策そのもの」と評価した。

「三支一援」計画は10年以上にわたり大学卒業生を地方・少数民族地域へ派遣している。

2019年の再下放計画は1,000万人超を対象としている。

課題と展望

蔡慎坤氏は耕作可能土地不足が上山下郷の行き詰まりにつながっていると指摘した。

盛雪氏は農村政策が時代遅れで実効性が低いと評価した。

失業した若者が都市に集中し、潜在的な不安定要因が増大している。

賃金未払い、ストライキ、権利保護事件が頻発し、農民工の低賃金と未払い問題が存在する。

中国共産党第20回党大会で掲げられた「強い農業国」建設と「共同富裕」目標の整合性が検証されている。

AI技術の進展が若年層の雇用構造を変えていることが報告されている。