2026/08/27

2029年危機:欧米防衛策とロシア軍産業・EU備蓄


政治・外交・安全保障の動向

2024年春、連邦軍総監カーステン・ブロイアは2029年を「危機的な年」と指摘した。

同年、国防相ボリス・ピストリウスは「戦争対応能力」の強化を呼びかけた。

5月6日、フリードリヒ・メルツ首相はBND関係者と会合し、ロシア軍が2029年にNATO加盟国領土への大規模攻撃を可能とする機密分析報告を受領した。

2025年6月、NATO事務総長マーク・ルッテはロシアの将来的な侵攻リスクについて言及し、12月11日にはロシアが今後5年以内にNATO加盟国を攻撃する可能性があると警告した。ドイツでの演説では「ロシアは我々の社会に対する秘密工作を激化させている」と指摘した。

ロシアのプーチン大統領は、ヨーロッパとの戦争計画はないとしながら、ヨーロッパが望めば「今すぐ」応じる準備があると述べた。

2022年、ロシア軍は約20万人をロシア・ウクライナ国境越えてウクライナに侵攻した。

ドナルド・トランプ米大統領は、初期の和平案がロシア寄りと見られたが、就任後にロシアに対し融和的な和平案を提示した。

2025年4月25日、イギリス・フランス・ドイツ・ポーランド首脳がロンドンで会談し、和平案をまとめた。

同年5月、ウクライナ・ロシア代表団はイスタンブールで3年ぶりに会談した。

以上の政治的発言と動向を踏まえて、次に軍事・防衛計画の評価に移る。

軍事・防衛計画の評価

2025年、NATO高官は「2029年まで平和が続く」と示唆する発言が欧州の軍備強化を先送りさせる懸念を表明した。

BNDの分析官は、2029年が軍事政策の焦点として公的議論に定着したことに不満を示し、ロシアがドイツに対して攻撃的な行動を示していると指摘した。

BNDの専門家は、ロシアがウクライナで勝利した場合、2024年時点から5年以内にNATO領域への侵攻が可能と分析した。

デンマーク国防情報局(DDIS)は2024年2月9日の報告で、ロシア・NATO・EUに対する脅威が時間とともに高まると予測した。ロシアは西側諸国との対立を認識し、NATOとの戦争に向けて準備を進めていると指摘した。戦争開始の決定はまだ下されていないが体制は整っており、同時に複数のNATO加盟国と戦闘することは現実的ではないと分析した。

この評価を受けて、ロシアの軍事産業と欧州の生産能力に関する情報を確認する。

ロシアの軍事産業と欧州の生産能力

ロシアの軍事産業は2025年時点で100%稼働し、年間数千台の戦車を生産した。イランからの輸入を行わず、「シャヘド136」戦闘ドローンを自国で製造した。

ロシア経済は3年以上にわたり戦時体制を維持し、製造業はドローン、ミサイル、砲弾の増産を続けている。

ドイツのキール世界経済研究所は、毎月約150両の戦車、約550両の歩兵戦闘車、120機のドローン「ランセット」、50門以上の火砲を生産した。

イギリスおよび他の西側同盟国は、ロシアの上記水準の兵器大量生産には達していない。

西欧兵器メーカーの専門家は、ロシアが同等の大量生産に近づくには時間がかかると指摘した。

フランスとドイツは、18歳対象の志願制兵役制度を復活させる動きを示した。

これらの産業状況を背景に、EUは備蓄と危機対策を強化している。

EUの備蓄・危機対策

EUはロシアとの戦争リスク増大に伴い、食料・水・燃料・医薬品等の備蓄を各加盟国に呼びかけた。

2025年7月21日、生活必需品備蓄計画を初めて実施した。

新備蓄計画は大規模停電、自然災害、紛争、パンデミック時の供給継続を目的とし、備蓄ネットワーク構築、備蓄不足の把握、EUレベルでの備蓄強化を含む。

各国の備蓄水準は大きくばらつきがあると報告された。

ブリュッセルは、NATOがロシアの5年以内侵攻警鐘を受けて「備蓄戦略」を策定した。

27か国のEU加盟国は2030年までに自国防衛能力を強化し、広範囲の備え態勢を整備する方針を示した。

EU危機管理担当委員ハジア・ラヒブは2024年7月9日、社会を支える必需品の常時確保を目標とし、ロシアと1,000キロにわたる国境を接する国は戦争脅威を感じるのは当然と指摘した。

フィンランドなどのEU東部国境諸国は、以前から潜在的紛争に備える体制を整備している。

EUは2023年3月に全世帯に3日分のサバイバルキット(水・食料・懐中電灯等)を備えるよう呼びかけた。

備蓄体制の整備を踏まえて、次に安全保障シナリオの分析に移る。

安全保障シナリオと確率

GLOBSECレポートは2025‑2026年のロシア・ウクライナ戦争展開を分析し、61人の安全保障専門家への調査結果に基づく。

ユリア・オスモロフスカは、4つの軍事シナリオが3つの平和シナリオを上回り、75%対25%の比率で軍事シナリオが支配的と指摘した。

  • シナリオ1「資源枯渇による低強度消耗戦」:38%
  • シナリオ2「ハイブリッド型第三次世界大戦」:20%
  • シナリオ3「現在の強度が維持される」:13%
  • シナリオ4「合理的に許容される停戦」:12%
  • シナリオ5「ウクライナにとって容認できない停戦」:11%
  • シナリオ6「米国撤退中のロシア突破」:4%
  • シナリオ7「ウクライナの利益に対応する平和」:2%

レポートは、2022/23年は政治要因と軍事要因が同数であったが、2025/26年は軍事要因と軍事・財政要因が9:1で支配したと分析した。

偽りの平和はロシアの侵略を報酬化し、ウクライナを次の決定的攻撃に脆弱にすると指摘した。

リチャード・シレフは「アメリカはもはや信頼できる同盟国ではない」と発言した。

シナリオ分析の結果を受け、課題と将来展望を検討する。

課題と将来展望

NATOは30の欧州諸国に加え米国・カナダが加盟し、軍備増額を約束した。

防衛費と軍事生産の急速な増加が必要とされる。

欧州諸国は2027‑2030年に向け、ロシアとの潜在的直接対決に備え、ウクライナ防衛部門、航空防衛システム、砲弾、長距離ミサイル、ドローンの生産・供給が不可欠と強調した。

ベルギーではドローン目撃が頻発し、ロシア関与の疑念が報道された。

2023年以降、ハイブリッド戦・グレーゾーン戦の攻撃事案が増加していると報じられた。