インドネシアでの絶滅危惧種タイマイ殺害事件
AIDA(国際フリーダイビング協会)の上級インストラクターであるウェイ・シャン(魏尚)氏が、インドネシアのラジャ・アンパット保護水域にて絶滅危惧種のタイマイを水中銃で射殺し、調理して食べました。
スキューバダイビング装備を着用し、至近距離から殺害、解体、調理する様子が動画に記録されています。ウェイ・シャン氏は2026年9月14日、スルタン・ハサヌディン空港からの出国時にマカサール移民局により逮捕され、現在はインドネシアからの出国を禁止されています。
このニュースは中国のSNS「微博(ウェイボー)」でトレンド入りし、大きな話題となっています。
タイマイの希少性と密猟の構造
タイマイは国際的な絶滅危惧種であり、以下の指定を受けています。
- IUCN(国際自然保護連合)レッドリストへの指定
- CITES(ワシントン条約)附属書Iへの掲載
- 中国国内での「第一級保護野生動物」への分類
生存率はわずか1000分の1であり、成長に数十年を要します。また、海亀の中で唯一、食用による中毒事例が報告されている種です。
こうした希少性から、高級食材、伝統薬、ペット需要による高値取引が行われています。これが国際的な密猟組織の利益源となっており、野生生物犯罪の市場規模は年間推定約2兆円に上ります。サイやゾウの角・象牙、トラやユキヒョウの毛皮・骨、希少鳥類や爬虫類などが主な標的となっています。
インドネシアにおける現状と規制
インドネシア政府は、1990年代よりすべてのウミガメ種の狩猟、取引、販売を法律で禁止しています。しかし、広大な国土と多くの島嶼部を持つため、監視が困難という課題があります。密猟は国際的イメージの低下や、持続可能な観光産業への悪影響を及ぼします。
同国では、バリ島にて絶滅危惧種のウミガメを密猟し、肉を販売した疑いの中国籍男性が警察の捜査対象となる事例が発生しています。
中国における事例と国内規制
中国籍者による国外での事例では、沖縄でリュウキュウヤマガメやヤエヤマセマルハコガメ計107匹を捕獲し、香港へ密輸しようと企てた男女4人が、那覇地裁で執行猶予付きの有罪判決を受けています。
こうした事態に対し、中国では2024年の刑法および野生動物保護法の改正により、捕獲から販売まで全チェーンが規制対象となりました。適用される罪状と罰則は以下の通りです。
- 貴重・絶滅危惧野生動物危害罪:5年〜10年以上の有期懲役および罰金
- 不法狩猟罪:3年以下の有期懲役または罰金
あわせて、「刑事検察+公益訴訟」モデルによる生態環境損害費用の賠償請求が行われています。
業界団体の対応と国際的な対策
ダイビング業界では、PADIが海洋保護の重要性と生命尊重のメッセージを公式に発信しています。今回の事件で行われたスキューバフィッシングは、PADIの基本原則に明確に違反します。同原則では、水中生物に危害を加えない義務が定められています。また、SSI中国サービスセンターは本件の調査を開始し、責任あるダイビングの理念に反するとして適切な措置を講じる方針です。
国際的な対策としては、以下の取り組みが行われています。
- CITES(ワシントン条約)による過剰取引の禁止
- インターポールによる合同法執行作戦(「雷霆」「雷暴」など)の実施
- マレーシアとインドネシアによる越境保護区の共同建設