2026/08/20

飲食税率1%減税、企業の賛否と財政リスク【調査結果】


調査概要

週刊ポストは2026年7月6日から7月17日にかけて、飲食料品メーカーと小売大手10社に緊急アンケートを実施した。匿名回答を含む全10社から回答が得られた。

結果は次のとおりである。

  • サントリーホールディングスが唯一「反対」。
  • テーブルマークと大手スーパー・ドラッグストアが「賛成」。
  • キリンホールディングスとローソンが「慎重」=条件付き賛成。
  • 売上予測は、やや増加が4社、変わらないが4社、減少が2社である。

同期間に朝日新聞と帝国データバンクが実施した別調査では、主要企業107社を対象に賛成が6社、反対が29社、約70%が無回答または非公開とされた。

帝国データバンク(2026年2月、回答1,546社)では、プラス影響が25.7%、影響なしが48.2%、マイナス影響が9.3%と報告された。

企業別立場

  • サントリーホールディングス(鳥井信宏社長) – 減税が社会保障の安定財源を損ない、円安・長期金利上昇圧力を招く恐れがあるとし、外食利用控えによるマイナス影響と価格表示・システム改修等の事務負担を懸念して「反対」。
  • テーブルマーク(松田要輔社長) – 減税により購買心理が改善し、日常消費が下支えされると期待し「賛成」し、外食産業支援策の実施も必要と提案した。
  • 大手スーパー・ドラッグストア(匿名経営者) – 消費者価格低下で購買意欲が喚起される点を評価し「賛成」したが、財源の明確化とシステム改修負担、2年後の税率復帰リスクを懸念した。
  • キリンホールディングス(南方健志社長) – 物価高の影響を受けやすい層への支援として一定の意義を認めつつ、外食産業への影響最小化策と持続的・公正な税制への早期転換を要請し、財源の穴埋めが不透明である点を指摘して「慎重」。
  • ローソン(竹増貞信社長) – 消費税は医療・介護・年金の財源であり、減税には代替財源の明示が必須であるとし、将来世代への負担先送りを防ぐために議論を慎重に進めるべきと主張して「慎重」。
  • ファミリーマート(小谷建夫社長) – 減税は実質的な値下げと同等の効果があると主張し、価格表示変更等で現場混乱を避ける制度設計が不可欠であると指摘した。
  • アサヒグループホールディングス(勝木敦志社長) – 減税は一時的に消費を刺激するが、財政規律維持に疑問を呈した。
  • TOPPANホールディングス(大矢諭社長) – 減税が財政悪化を続けた場合、長期金利上昇と円安加速のシナリオがあると警告した。
  • 三井不動産(藤岡千春専務執行役員) – 社会保障費増大の中で減税は適切でないと指摘した。
  • ロッテ(中島英樹社長) – 国民支持を背景に減税は理解できるが、外食産業への影響と2年後の復税課題を懸念した。

政府方針と背景

高市早苗首相は、2025年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に減税する方針を発表した。2029年に食品・飲料の税率を1%から8%に戻す大幅増税を計画している。

消費税収は医療・介護・年金の重要な財源である。減税による財源欠損は国債・円への信認低下リスクを伴う。

給付付き税額控除の制度が提案され、企業・専門家から評価が高いとされている。

経済・財政への影響

国民の実質消費支出は7か月連続でマイナスとなっている。

2029年増税に対し、原材料費・人件費高騰を背景に減税効果が相殺される可能性が一部企業経営者から懸念されている。

TOPPANホールディングスは、減税が財政悪化を続けた場合に長期金利上昇と円安加速のシナリオがあると指摘している。

業種別影響

  • 小売業 – プラス影響率は36.8%で業界最高。消費意欲向上により売上増加が期待されるが、システム改修・価格表示変更の負担が懸念材料。
  • 飲食業・外食チェーン – 減税により外食が相対的に割高となり、売上約5%減少が予測される。大手外食チェーンは減税決定手続きに批判的。
  • 耐久消費財(家具等) – 減税で購買意欲が高まり、需要増加が期待される。
  • 情報サービス・紙類・文具・書籍卸売 – 財源議論が不十分で実現が難しいとの声がある。
  • 運輸・倉庫業 – 対象が食品のみであるため影響は限定的。
  • 建設・機械製造・機械・器具卸売 – 制度変更や複雑化への抵抗感とシステム改修業務増加が懸念される。
  • 不動産業 – 減税により予定納税分の資金流出が抑制され、設備投資・人件費に充当できる可能性がある。
  • 飲食料品小売業 – 食品が0%になると外食が割高化し、売上減少を懸念している。