調査と行政対応
中国中央政府は福建省厦門の飲食店に調査チームを派遣し、国家市場監督管理総局と国家疾病予防コントロール局が合同で現地の調査・監督・指導を実施した。
調査対象は農業用殺虫剤ジクロロボスを消毒目的で違法に使用した疑いである。
違法行為が確認された場合は「厳しく処罰」すると明言され、食品安全委員会弁公室は2024年8月26日に中央作業チームの立ち上げを発表した。
同時に一般当局は対象店舗への調査を実施し、ジクロロボス使用を確認した。
関連する消毒会社については2026年7月31日から検査を開始し、営業許可が未取得であることを指摘した。
飲食店でのジクロロボス違法使用
複数の飲食チェーンに属する数十店舗で、ジクロロボスが「消毒」目的で店内に噴霧された。
撮影された映像に食器や食材付近へ噴霧されている様子が確認されている。
ジクロロボスを供給した消毒会社は複数チェーン店を顧客に持ち、同薬剤を各店の消毒用に使用していた。
同社従業員は「消毒した飲食店には死んでも食べに行かない」と発言している。
ジクロロボスの基本情報
- 化学式: C₄H₇Cl₂O₄
- モル質量: 220.98 g/mol
- CAS番号: 62‑73‑7
- 密度: 1.42 g/cm³
- 沸点: 140 °C(圧力2.7 kPa)
- 水への溶解度: 微溶
- 作用機序: アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(不可逆的)
毒性と健康影響
- 吸引により倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢が起こる。
- 重篤例では瞳孔収縮、意識混濁、痙攣、死亡に至る。
- ラットの経口LD₅₀: 17 mg/kg、経皮LD₅₀: 70.4 mg/kg。
- 体内半減期は約3.5日。
法的指定と取扱い
ジクロロボスは農薬として開発された。かつては劇薬指定され、購入には署名・捺印が必要であったが、現在は第一類医薬品として販売され、劇薬指定は解除されている(バポナ殺虫プレート、2024年5月31日)。
毒物及び劇物取締法により「劇物」指定され、化学物質審査規制法では「一般化学物質」区分に属する。
年間製造・輸入量が1トン以上の場合は経済産業大臣への届出義務が課せられる。
使用形態と残留基準
主な使用は野菜・果樹・穀物等の害虫防除で、100~1500倍に希釈して使用される。燻煙剤、燻蒸剤、スプレー殺虫剤、樹脂蒸散剤としても利用される。
樹脂蒸散剤は2004年にADI超過リスクが指摘され、居室や飲食場所での使用が制限された。
中国国内の食品中残留基準は未精製穀物0.1 mg/kg、野菜・果物0.2 mg/kg、特定野菜0.5 mg/kgなどに細分化されている。
残留検査はGB/T 5009.20‑1996に基づくガスクロマトグラフィー法で実施される。
食品安全への影響
先行して、発がん性ホルムアルデヒドを含む溶液に漬けた白菜が出荷されたことが報告されている。
ジクロロボスが店内で噴霧されたことにより、食品への化学残留リスクが発生した。
過去の使用実績
日本では1980年代に年間約1,500トン、2005年には508トンと使用量が減少し、2012年4月に農薬登録が失効して農薬用途は終了した。
中国では天津農薬廠の国家規格(GB 2549‑2003)によりジクロロボス原体の純度は≥95%、残留トリクロルフォンは≤2.5%と規定されている。現在も農薬・防疫用として利用されているが、食品中残留は厳格に管理されている。
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