プロジェクト概要
UT-1水力発電所(アッパートリシュリ1)は、ネパール・ラスワ地域(カトマンズ北西約70km)に建設中の大型水路式水力発電所である。出力は216 MW、総事業費は6億4700万米ドル(約1030億円)で、2026年末の完成が予定されていた。完成後は30年間で年間1456 GWhをネパール政府へ販売する計画である。
出資構造
- 韓国南東発電(特別目的会社NWEDC経由) 50%
- 韓国海外インフラ都市開発支援公社(KIND) 25%
- 国際金融公社(IFC) 15%
- ネパール現地企業 10%
参画企業と役割
- 韓国南東発電:筆頭株主として事業全体を推進
- 斗山エナビリティ:EPC(設計・調達・施工)を一括担当し、2020年に約4100億ウォン規模の契約を締結
- NWEDC(ネパール・ウォーター・アンド・エナジー・デベロップメント):特別目的会社として事業を管理
金融支援
融資団には韓国輸出入銀行、IFC、アジア開発銀行、アジアインフラ投資銀行など9つの金融機関が参加した。初期段階でIFCと共同開発し、政治・財務リスクの抑制が図られた。
技術仕様
上部ダム(堰)は高さ29.5 m、長さ100.9 mである。導水トンネルは9.7 kmに及び、2022年1月に本格工事が開始された。2023年9月には約300人が参加した起工式がカトマンズで開催された。
進捗と災害
2024年時点で工事進捗は84%であった。同年に氷河湖崩壊と岩石崩落が発生し、土砂流入がトリシュリ川をせき止めた。2026年8月26日09:00頃の大洪水により、上流側ダムは90%以上破壊され、ベースキャンプも約90%流失した。
被害概要
- 死者:580人超
- 被災者:約9万3000人(ネパール外務省報告)
- インフラ:通信・道路が寸断され、ヘリコプター以外の移動手段が利用不可
人的被害と捜索
- 韓国南東発電の派遣社員は7人。うち4人はカトマンズで無事、残り3人は行方不明で捜索が継続されている。
- 斗山エナビリティの現地勤務者は20人。うち6人(韓国人5人、帰化ネパール出身者1人)が行方不明である。
現場対応チーム
斗山エナビリティ8名、南東発電6名の計14名で構成され、被災状況の把握と事故収拾にあたっている。
政府・国際支援
- ネパール政府は外務省主導で警察・消防・政府合同迅速対応チームを編成し、現地に11名を派遣、ヘリコプターを投入した。
- 韓国政府は大統領李在明の指示のもと、警察・消防・政府合同対策チームをネパールへ派遣した。
- 国際メディアは氷河崩落が洪水の直接原因であると報道した。
法的リスク
天災等の不可抗力で完成が遅延した場合、ネパール政府が2057年の事業帰属を主張すれば、南東発電との間で法的紛争が生じる可能性が指摘されている。
今後のスケジュールと不確実性
大洪水により完成が延期された。復旧費用および追加融資の議論が続いている。
市場・競合への影響
UT-1が完成すれば年間1456 GWhの供給が可能となり、既存のラスワガディ水力発電所を上回る規模になる計画であった。プロジェクト停止はネパールの再生可能エネルギー供給計画に遅れをもたらす。
投資リスク
9つの金融機関が関与する大規模プロジェクトが自然災害で中断したことは、同地域への投資リスク評価に影響を与える可能性がある。
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