記者ハンドブックの概要と版変遷
記者ハンドブックは共同通信社が編纂した用字用語集である。新聞用字用語集として位置付けられ、約750ページ、定価2,090円、ISBN 978-4-7641-0733-5で販売され、Amazonと楽天で購入できる。ニュース記事だけでなく公文書でも使用される。
歴史は、1949年に「ニュースマンズ・ハンドブック」が登場し、1956年に名称が「記者ハンドブック」に変更されたことに端を発する。第13版は350ページ・5章構成で、総ページ数は750ページである。第14版は2022年3月に発売され、前回改訂から6年ぶりの改訂となり、ジェンダー平等への配慮パートが新設された。
出版は共同通信社が行い、編集者・校正者は広く本ハンドブックを利用している。中日新聞社は本ハンドブックに準拠し、同社校閲部(コトバのゲンバ)がnoteで関連コンテンツを発信している。
表記ルールの基本方針
表記対象は共同通信社が定めた「漢字表」+常用漢字表(固有名詞を除く)である。漢字表にない音訓は片仮名で表記する。
- 例:麻、婆、餃、焼は片仮名表記になる。
- 料理名の例:麻婆豆腐 → マーボー豆腐、餃子 → ギョーザ、焼売 → シューマイ。
- 謙譲語「いただく」は漢字「頂く」、挨拶の「いただきます」は平仮名で表記する。
- 「及び腰」は動詞的に用いると漢字、接続詞的に用いると平仮名で表記する。
交ぜ書き・送り仮名・同音異義語の取扱い
語の一部が漢字になる場合は交ぜ書きを認め、語句が付くと送り仮名を省くことが許容されている。
- 研さん → 研究
- 改ざん → 改変
- 預け入れ+期間 → 預入期間
- 「訊く」は使用せず「聞く」を基本とし、特別な意味のときのみ「聴く」を用いる(約40例が掲載)。
数字・地名・ジェンダー配慮
数量・順序はアラビア数字で表記し、慣用句は漢数字で表記する。
- 例:百点満点は漢数字。
行政上存在しない地名「ススキノ」「薄野」「すすきの」は使用しない。
「霞が関」や「由比ヶ浜」は「霞ヶ関」「由比ガ浜」など複数形があることに留意する。
第14版で追加されたジェンダー配慮により、差別語「土方」「土木」は「建設労働者」「作業員」に置換する。
麻婆豆腐の表記指針
「麻」と「婆」の読みは漢字表外であるため、実務では片仮名「マーボー豆腐」と表記することが推奨される。漢字で記す場合は必ず振り仮名を付すが、読者の混乱を防ぐ観点から片仮名表記が基準となる。漢字表外の音訓を無理に漢字化すると読者に混乱を招くため、NGと規定されている。
誤用例と代替表現
代表的な誤用例は以下のとおりである。
- 交ぜ書き例:研さん → 研究、改ざん → 改変。
- 誤字例:豆鼓は「豆豉」の誤字、豆板醤は本来「豆瓣醤」だが誤表記が定着している。
- 企業・商標表記例:ロゴ表記と実際の表記が異なるケース(キヤノン、キユーピー、三和シヤッター工業、シヤチハタ、富士フイルム)。登録商標は使用せず、例として「オービス → 速度違反取り締まり装置」がある。
- 外来語・地名変更例:メード → メイド、ウクライナ首都は「キーウ」または「キーウ(キエフ)」に変更。
料理的背景と日本での普及
名称は顔にあばた(麻点)があった陳劉氏(陳麻婆)の妻に由来し、1862年に四川省成都の「陳興盛飯舗」で誕生した。清代の文献に1碗8文と記載され、1956年に「陳麻婆豆腐店」が国営企業化した。
主材料は挽肉、唐辛子、花椒、豆板醤、豆豉、豆腐である。
味の八要素は麻(花椒の痺れ)、辣(唐辛子の辛味)、燙(熱さ)、酥(カリカリ感)、嫩(柔らかさ)、鮮(鮮度)、香(香り)、整(形の保持)で構成される。
日本への紹介は1958年に王馬熙純が『中国料理』で紹介され、1959年にNHKの料理番組で放送された。1970年代にレトルトパウチタイプの麻婆豆腐ソースが販売され、家庭料理として定着した。
メディア・コンテンツ関連情報
中日新聞校閲部が運営する「コトバのゲンバ」では、表記・誤用に関する投稿が多数掲載されている。例として「間違い探しになる間違いを探す」「数字表記で4苦8苦」「新聞表記と街で見かける表記の間で」などがある。
第14版の参考情報はISBN 978-4-7641-0733-5、約750ページ、定価2,090円である。
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