2026/09/19

米国の「宇宙優位性」戦略


米国の政策転換と防衛の目的

米国は軌道上に宇宙兵器の配備を認めた。空軍長官は、軌道上の宇宙制御兵器を保有し、敵対勢力の行動から統合部隊を防衛する方針を明らかにした。

この政策転換は、単なる兵器配備に留まらず、宇宙空間での優位性を維持するという戦略的意図に基づくものである。空軍長官は、宇宙空間での優位性維持が極めて重要であると指摘した。

宇宙優位性の維持とSpace Control

米国は空だけでなく宇宙においても優位性を維持することが重要である。中国やロシアの軍事能力拡大と対宇宙能力開発は、米国の権益に対する潜在的な脅威と認識されている。

米宇宙軍は「Space Control」を中核任務として明確化し、敵には同様の自由を与えない「Space Superiority(宇宙優勢)」の実現を目指す。

「Space Control」は以下の3分野で構成される。

  • Orbital Warfare(軌道戦)
  • Electromagnetic Warfare(電磁戦)
  • Cyberspace Warfare(サイバー戦)

この任務は、味方が必要な時と場所で重大な妨害を受けずに行動し、敵に同様の自由を与えない状態を得ることを目的とする。

宇宙軍は、キネティック・非キネティック双方の手段を用い、敵の能力を「disruption(妨害)」「degradation(低下)」「destruction(破壊)」する任務を遂行する。

米国の宇宙防衛技術と計画

米宇宙軍は「軌道上の宇宙制御兵器(on-orbit space control weapons)」を保有していると公表した。

国防総省は次世代ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」の中核として、Space-Based Interceptor(SBI)プログラムを公表した。

SBIプログラムは、低軌道に多数の迎撃機を配備し、弾道ミサイルなどを複数の飛行段階で迎撃する構想である。

米軍は2026年4月にSBIプログラムを公表した。

また、米軍は低価格な多用途無人機の実戦配備計画を進めている。

  • 2029年までに100機配備
  • 32年までに500機配備

宇宙配備型ミサイル迎撃装置の開発には莫大な費用がかかるという実現性への疑問が呈されている。

外部勢力による脅威と対抗措置

中国は軍の近代化戦略の一環として、軍事衛星の開発と対宇宙能力の開発を推進している。中国は軍事衛星だけでなく、SpaceXのスターリンクのような商用衛星コンステレーションの機能を低下・妨害する能力に関する宇宙分野での協力を拡大している。

中国は対宇宙手段への投資を進めており、米国の宇宙権益に対する潜在的な脅威となっている。中国は宇宙空間を平和利用の領域とし、米国の軍事活動拡大の停止を求めている。

ロシアは宇宙を戦闘領域と捉え、将来の紛争で宇宙における優位性が決定的な要因になると考えている。ロシアは核搭載可能な部分軌道極超音速ミサイプの開発や、電磁パルス兵器の開発に取り組んでいると警告されている。

ロシアは軍事宇宙システムと電子戦において数十年にわたる運用経験を有している。ロシアと中国は専門知識の共有と政策調整を通じて、体系的かつ多分野にわたる宇宙兵器の構築計画を進めている。

中国とロシアは米国の宇宙における優位性を奪おうとしており、米国はさらなる能力の獲得が必要とされている。

米空軍長官は、能力の存在を公に認めることが抑止につながる一方で、技術的・運用上の詳細を明らかにするとその効果を損なうとの考えを示した。また、米国の能力を公表しないことが必ずしも安定につながるわけではないという立場が示されている。

国際的課題とリスク

宇宙兵器に関する国際的な論点や物理的リスクが存在する。

1967年に発効した宇宙条約第4条は、核兵器その他の大量破壊兵器を地球周回軌道に乗せたり、宇宙空間に配備したりすることを禁止している。同条約は、宇宙空間での通常兵器の使用や、地上配備型兵器を宇宙空間の資産に対して使用することは禁止していないため、解釈の余地が残されている。現行の国際的な枠組みには、宇宙兵器全般について統一された定義や包括的な検証制度が存在しない。

宇宙空間の物理的リスクとしてデブリ問題が存在する。中国は2007年に気象衛星「風雲1号C」を破壊した実験で多数の追跡可能なデブリが発生した。ロシアは2021年の衛星攻撃実験で大量のデブリが生じ、国際宇宙ステーションの乗組員が一時的に退避措置を取った。

軌道上の物体が増えることで、衝突によって生じた破片が別の衝突を引き起こす危険性が高まっている。軌道上兵器が物理的な破壊を伴う運動エネルギー型攻撃は、多数のデブリを発生させる可能性がある。