津久井やまゆり園での身体的虐待事案
令和8年8月21日午後、津久井やまゆり園において、30代男性職員が入所者の50代男性に対し、左頬を1回平手打ちする身体的虐待が発生しました。職員は「いらいらして、つい手が出てしまった」と動機を述べています。入所者にけがはありませんでした。
本件は別の職員による目撃と幹部への報告で発覚し、現在は当該職員に自宅待機指示が出ています。
施設の対応と行政の指導
津久井やまゆり園およびかながわ共同会は、障害者虐待防止法に基づき自治体へ通報し、利用者本人と家族へ謝罪しました。山下康理事長は、過去10年間の支援が不十分であったと認識し、根本的な見直しが必要であると表明しています。
再発防止策として、以下の対応を推進します。
- 来月、専門家を招いた職員研修を実施
- 他の利用者への同様の行為がないか調査および原因究明を遂行
神奈川県は本件を「身体的虐待」と認定し、9月10日に改善指導を行いました。県は「障害者が安心安全に過ごす施設として絶対にあってはならない行為」として謝罪しています。
津久井やまゆり園の再整備と支援体制
津久井やまゆり園では、過去の事件を教訓とした安全対策の強化と「小規模・分散型」への整備移行が行われました。2018年5月に旧施設の解体を開始し、2021年7月4日に新築・改修工事を完了して開所しました。
あわせて、以下の体制整備および鎮魂の取り組みが進められています。
- 2021年11月16日:横浜市に「芹が谷やまゆり園」を開所し分散化を実現
- 2021年7月20日:犠牲者12人の氏名を刻んだ「鎮魂のモニュメント」を公開
- 専門機関と連携した中長期的な「こころのケア」体制による職員支援の構築
施設運営における課題と他施設での事例
中井やまゆり園においても不適切行為が日常化していた可能性があり、以下の虐待事例が相次いで発覚しました。
- 2020年:利用者への押し付け、飲料への塩混入
- 2021年以降:肛門へのナット挿入、視力喪失放置、低栄養放置、20時間以上の施錠閉じ込め
これを受け、当事者目線の支援を徹底するため、2026年4月に運営を地方独立行政法人へ移行します。
過去の事件と法整備および社会的現状
2016年、植松聖死刑囚が差別的思想に基づき、19人を殺害し26人に重軽傷を負わせる事件が発生しました。植松死刑囚は2020年3月に死刑判決が確定し、その後の再審請求は「独自の見解であり再審事由に当たらない」として棄却されています。
この事件を受け、行政による以下の制度整備が進んでいます。
- 神奈川県:「ともに生きる社会かながわ憲章」の策定、および2023年4月「県当事者目線の障害福祉推進条例」の施行(差別・虐待禁止、当事者参加を推進)
- 相模原市:2025年4月に「市人権尊重のまちづくり条例」を全面施行(事件を不当な差別的思考に基づく犯罪と定義)。2026年6月より「共にささえあいサポーター」養成講座を開始
一方で、共同通信のアンケートでは、回答者の9割超が「事件や教訓が風化している」と感じており、偏見・差別の解消が進んだと感じているのは約3割にとどまっています。当事者家族は、理解が進まない現状から地域社会への移行施策に強い不安を抱いています。