スーパーカブの設計思想と歴史
スーパーカブは、誰でも扱いやすく、毎日使いやすいバイクを目指して設計されました。お蕎麦屋さんが片手でも運転できるというコンセプトに基づき、左手のクラッチレバーを排除して操作を簡略化しています。
Hondaは1958年に初代C100を誕生させ、1968年から2022年までに6つの型式を展開しました。全モデルに二種免許区分の4ストロークエンジンを搭載し、排気量は72ccから109ccまで幅広く展開しています。本田宗一郎氏の「悪いところがあればパッと直す」という方針により設計変更(セッペン)が頻繁に行われたため、生産時期によって部品が異なります。
主要モデルのスペック変遷
- スーパーカブ70 (C70): 1968-1999年 / 72cc / 6ps / 定価66,000円
- スーパーカブ90 (HA02): 1980-2008年 / 85cc / 7ps / 定価177,000円
- カブ100EX (HA05): 1988-2000年 / 97cc / 8ps / 定価209,000円
- スーパーカブ110 (JA07/JA10/JA44): 2009-2022年 / 109cc / 8-8.2ps / 定価228,900〜275,400円
駆動・変速メカニズムと操作
エンジン回転を利用してクラッチを自動的に繋ぎ切りする「自動遠心クラッチ」が採用されています。発進時に回転上昇で繋がり、停車時に切れるためエンストしません。これにより、ライダーが左手でクラッチレバーを操作する必要がなくなっています。シフト操作時にも適切にクラッチを断接させます。
2009年以降の110ccモデルには「二段クラッチ」が導入されました。クランク軸側の発進用遠心クラッチとミッション軸側の変速用多板クラッチを組み合わせ、変速時のショックを抑えてシフトフィーリングを滑らかにしています。
シフトパターンにはロータリー方式が採用されています。走行中は安全のため4速からニュートラルに入らないよう制御されていますが、停車時は4速から前方に踏み込むことでニュートラルに移行でき、手間が軽減されています。
変速をスムーズに行うには、アクセルを一度緩めてからシフト操作し、完了後に再度アクセルを開けることが推奨されます。なお、エンジン停止時はギアの歯車同士が当たっているため、シフトチェンジがしにくい場合があります。
インターフェースと仕様の差異
ブレーキはフロントとリアの同時使用が基本であり、110などの最新モデルにはフロントABSが装備されています。
スタンド構造は、簡易的な駐輪用のサイドスタンドと、後輪を浮かせて荷積み・整備・洗車に適したセンタースタンドがあります。センタースタンドは、左端を強く踏むことでテコの原理により掛けやすく設計されています。旧モデルはサイドスタンドを出したままの発進が可能でしたが、最新モデルにはニュートラル時にのみスタンドが立てられるサイドスタンドキャンセラーが搭載されています。
ウインカースイッチの配置はモデルによって異なります。鉄カブ最終型までの旧モデルでは右側に配置されていましたが、直近約10年の新モデルでは左側に配置されています。また、最新モデルにはLEDヘッドライトが装備されています。
愛好家による独自の呼称(カブ語)
クラッチ調整ネジの目印に関しては、目印が1つのものを「一つ星」、縦に2つあるものを「二つ星(1961年頃までの初期型C100に存在)」と呼びます。
外装部品については、以下の呼称が用いられています。
- おっぱいウインカー:丸く張り出した形状(1966年C50等)
- 鷲鼻テール:初期C100のテールランプ横顔(1958-60年)
- ピノキオテール:リフレクター付テールランプ(1960年頃)
- おむすびテール:1960年代中盤以降の形状
- 行灯カブ:ポジションライトが行灯に見える形状(1968年C90で新設)
- かもめハンドル:正面から見てかもめに見える形状(1971年デラックスC50)