不法滞在者ゼロプランの策定と強制送還の現状
日本政府および出入国在留管理庁は、国民の安全・安心への不安の高まりを背景に「不法滞在者ゼロプラン」を策定しました。これに伴い、2025年5月および2026年に「強力推進パッケージ」が発表されています。
国費による強制送還者数は増加しており、2025年6〜8月は119人と前年同期の58人から倍増しました。月平均送還者数も、1〜5月の約16人から6〜12月は約33人へと倍増しています。2025年全体の護送官同行送還者数は318人に達し、過去最多となりました。
あわせて審査期間の短縮も目標に掲げており、従来は1年10か月を要していた新規受理申請を、2026年中に6か月以内に短縮することを目指しています。
法改正と運用ルールの変更
2024年6月施行の改正入管法により、難民申請を3回目以降に行う者を送還対象とする送還停止効の例外規定が設けられました。2025年の例外規定による送還者は52人で、前年の3倍となりました。
運用の方向性も転換されています。従来は自費帰国などの「説得に応じない人」に限定していましたが、現在は帰国の意思を示し航空券を購入していた者に対しても強制送還を実施しています。
さらに、審査の効率化および手続きの簡略化のために以下の措置が導入されています。
- AIを含むデジタル技術の活用による審査促進。
- 申請書ベースでの類型化により、難民条約上の迫害に明らかに該当しない「B案件」の在留制限を厳格化。B案件の割合は以前の1%前後から、2025年には14.3%(1,615人)へ急増しました。
- 2026年1月より、送還2か月前の弁護士への通知を廃止。
難民認定の実績と国際比較
2025年の日本の難民申請者数は11,298人と3年連続で1万人を超えましたが、認定者数は187人にとどまりました。認定率は1.4%で、2年連続で低下しています。
2024年の国際的な認定率と比較すると、日本(2025年)の1.4%に対し、英国は42.4%、ドイツは約15.6%となっています。
2025年の国籍別データでは、強制送還者数はトルコ(71人)、フィリピン(46人)、スリランカ(44人)の順に多くなっています。申請中の送還者数はトルコ(30人)、スリランカ(12人)の順です。また、ミャンマーからの申請者は1,490人と過去最多でしたが、認定されたのは9人のみでした。
人権への影響と専門家による指摘
強制執行の実態として、帰国意思があり航空券を所持していたクルド人家族が送還された事例があります。父親は手錠を掛けられた状態で自宅へ所持品を取りに行かされました。また、日本で育った子供の送還や親子の離別が発生しています。B案件の申請者は、就労、医療アクセス、公的支援が不可能な状態で生活しています。
これらの状況に対し、支援団体や専門家から以下の指摘がなされています。
- 支援関係者:数値目標の達成や予算消化が優先されているのではないかという疑念。
- 難民支援協会(JAR):AI活用による不認定判断の拙速化や、難民条約への違反。
- 駒井知会弁護士:本国での拘束リスクがあるため、やみくもな送還ではなく審査制度の作り直しが必要であるとの主張。
- UNHCR:すべての申請者に直接申立ての機会を付与すべきとの見解。
また、国際人権法(自由権規約)では、在留資格に関わらず「品位を損なう扱い」を禁止しています。
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