アメリカ石油業界幹部による燃料危機の警告
アメリカの石油業界幹部は、燃料危機の到来を警告しています。数ヶ月前からホルムズ海峡の封鎖長期化による危機を予見しており、現在の状況を「大燃料危機」が既に到来していると指摘しています。
資源および在庫の逼迫状況は以下の通りです。
- 世界各地の商業用燃料在庫は、6カ月余りにわたり減少が継続しています。
- 戦略原油備蓄(SPR)は、これ以上大きく取り崩すことができない限界状態にあります。
- シェブロンのマイク・ワースCEOは、価格および供給面のリスク緩和の仕組みがほぼ底をついたと指摘しており、短期間での原油相場の下落は考えにくいとの見解を示しています。
地政学的要因と供給網の寸断
2026年2月の米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃への報復により、ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となりました。これにより世界の日量原油供給の約20%に影響が出ています。
この状況により、ナフサ調達の支障による「ナフサショック」が発生しています。また、曳船、石油タンカー、商船の沈没・損傷・放棄が相次いでおり、人命被害も発生しています。
サウジアラビアでは、攻撃によって東西パイプライン(全長約1,200km)のポンプ設備が被害を受けました。迂回ルートの稼働停止により、少なくとも日量250万バレルが失われ、需給がタイト化しています。
海上交通においては、以下の状況が報告されています。
- マースクのヴィンセント・クレルクCEOは、アジア・中東では依存度の高さから在庫が急速に減少していると指摘しています。
- 迂回航路(地中海・スuez運河経由)への振り向けによる追加費用を顧客へ転嫁しています。
- UAE主導のシャトル輸送では、湾内で中・小タンカーで積込、信号を切って通過し、湾外で大型タンカーに積み替えを行う手法が取られています。
- バベルマンデブ海峡の通過量は、2026年4~6月において前年同期の約1.8倍に拡大しています。
過去の危機との比較と経済への影響
現在の燃料危機は、過去に発生した石油危機と類似した経済的影響を及ぼしています。過去の事例には以下のものがあります。
- 第一次石油危機(1973年):第四次中東戦争に伴うOAPECの石油禁輸が原因。日本で「狂乱物価」が発生し、高度経済成長の終焉、省エネ技術への転換を招きました。
- 第二次石油危機(1979年):イラン革命による供給不安定化が原因。スタグフレーションが発生し、日本の省エネ法制定や自動車産業の構造転換を招きました。
- その他の危機:1990年の湾岸危機(イラクのクウェート侵攻)、2022年のウクライナ危機(ロシアへの制裁による資源の武器化)があります。
これらの危機と同様に、現在の燃料危機は経済に連鎖反応を引き起こしています。ガソリン、電気、物流、商品・サービス価格の上昇によるインフレが加速しており、肥料、アルミニウム、ヘリウム等の商品価格も連動して上昇しています。
三菱UFJ銀行の試算では、原油価格上昇による日本経済への影響として、実質GDP成長率の押し下げおよび消費者物価の上昇が挙げられています。また、貨物運賃の高騰はアフリカ・中南米の新興国における食料・燃料の価格手頃性を脅かしています。
各国の対応と将来展望
資源エネルギー庁は、原油輸入の約9割を中東に依存する構造を認識しており、供給不安への対策として以下の項目を検討・実施しています。
- 原油代替調達の8割への引き上げ見込み
- 供給不安長期化時の国家備蓄放出、IEA協調、産油国への増産要請の検討
- 2026年7月、ガソリン補助単価を2.8円から7.50円へ拡大
国際的な対応および政策動向は以下の通りです。
- 米国政府による、インドへのロシア産石油の購入免除付与(供給不足の緩和策)
- 制裁下におけるロシア産石油の役割(中東危機における割安な供給源としてアジア市場の安定要因)
- UAEのOPEC/OPECプラス脱退
- 中国による日本向けデュアルユース品の輸出制限(2026年1月)
構造的な課題である単一供給源への過度な依存を克服するため、再生可能エネルギーへの移行が進められています。脱炭素社会に向けた水素エネルギー、風力、太陽光発電の普及、RE100への加盟、EV販売台数の増加などが挙げられます。
市場予測(EIA)では、2026年の平均価格を短期見通しで1バレル82ドル、年間で95ドルと予測しています。2027年には中東の生産回復により、需要は1日あたり250万バレル増加すると予測されています。