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土と火と水だけで器を作る陶芸家、櫂は、色のない日々に飢えていた。古びた市場で、感情と色を結びつけたと囁く老人が置いた小さなカードを見つけた。「感情は色になる」だけが書かれていた。その裏に細い茎が添えられ、櫂はそれを小さな鉢に入れた。葉は緑のまま静かに佇んでいた。
月が高く昇る夜、櫂が静かに呟くと、葉はすぐに淡い紫へと変わり、凍るような静寂が漂った。その瞬間、体の奥に冷たい震えが走り、感情の色が葉に映し出された。彼は、喜びは緑、怒りは紫、感謝は金、悲しみは淡い青と覚えていた。
色が次第に混ざり合い、葉は灰色に染まりゆくと、ゆっくりと枯れた。乾いた土だけが残り、床に薄く痕を残した。その痕は櫂の精神に静かに刻まれ、彼は再び陶芸に向かった。
灰色の土を練り込むと、微かな硬い感触が生まれ、彼は様相を変えては焼き直した。やがて、土に微かな艶が現れ、触れた者の感情が表面に広がった。色が落ち着くと、温かな熱が腕へと伝わり、柔らかな暖かさが全身に満ちた。
葉が教えてくれたのは、色は感情の鏡であり、変わりゆく色の中核にこそ、暖かさが潜んでいるということ。灰色の土に潜む息吹が芽生える。
ある日、器が静かに割れ、砕けた破片は土に還り、そこから新たな葉が芽吹いた。櫂はその様子を見て、色は永遠に循環するものだと悟った。