調性とモードで選ぶテンションと回避音の使い分け
テンション音はコードに彩りを、回避音は次のコードへの解決を促す役割があります。
「安全・危険」という二元的な語り口ではなく、**「その音が現在の調性・モードにどれだけ適合しているか」**を基準に選べば、自然にコード進行を彩ることができます。
本稿では、調性・モード別に「利用しやすいテンション」と「注意が必要な回避音」の見分け方と、実際の演奏・作曲での具体的な活用例を示します。
1. 基本概念
- コードトーン:根音・3度・5度・7度(四和音の場合)の4つの音。コードの骨格です。
- テンション音:コードトーンに加えて使用できる 9度・11度・13度の音。コードに緊張感や色彩を与えます。
- 回避音:**コードトーンの半音上(短2度上)**に位置する音、特に3度や5度と半音で衝突する音です。装飾的に短く使用します。
- 例:Cmaj7(C・E・G・B)における F(11度) は、3度の E と半音でぶつかるため回避音とされます。
- ただし、ドミナント7♭9(例:C7 の ♭9(Db))は、テンションとして扱われることが一般的です。これは、♭9 がトニックへの強い解決を促す「必要な緊張」になるためです。
注:♭9(フラットナイン)、♯9(シャープナイン)、♭5(フラットファイブ/減5度)などの記号は、初出時に日本語読みを併記します。
2. テンション音の種類と選び方
2‑1. ナチュラルテンション
- 9、11、13(記号なし)
メジャー・マイナーを問わず、使用できる音階上の音です。例として、Cメジャーキーの Cmaj7 では D(9)・F(11)・A(13) が該当します。
2‑2. オルタードテンション
- ♭9、♯9、♯11、♭13 など、臨時記号が付くテンション
主にドミナント七和音(V7)で使用し、緊張感を強めます。原則:同じ度数のナチュラルテンションとオルタードテンションは同時に入れません(重要)。
なお、ドミナント7♭9 以外のコード(Maj7 や m7)では、オルタードテンションは原則として使用しません。
3. テンションと回避音の見分け方
3‑1. 調和しやすいテンション(「安全」ではなく「調和しやすい」)
次の2 条件を満たす音が調和しやすいテンションです。
1. ダイアトニック(調性の音階)上の音であること。
2. コードトーンと 9・11・13 の音程関係にあること。
例外として、3度を省略したボイシングでは 11度(例:F)を装飾音として短く使用できます。
具体例
Cmaj7(C・E・G・B)
D(9) と A(13) はダイアトニックで、コードトーンと調和的です。F(11) は 3 度の E と半音上になるため基本的には避けますが、3 度を省略したボイシングでは装飾音として使用可能です。Fmaj7(F・A・C・E)
G(9) と A(13) はダイアトニックで利用しやすいです。B(♯11) は F メジャー音階に含まれないため、リディアン的に扱う場合にのみ彩りとして使用します。属七和音(V7)
ダイアトニックの 9・13 に加えて、オルタードテンション(♭9、♯9、♯11、♭13)も許容されます。ただし、ナチュラルテンションとオルタードテンションは同時に入れません(重要)。
3‑2. 回避音の特徴
次のいずれかの関係にある音が回避音とされます。
1. 根音から半音上(♭9)。例:C7 の ♭9(Db) は根音 C の半音上です。ただし、ドミナントコードにおいてはこの♭9は「テンション」として扱われます。
2. コードトーン(特に3度や5度)と半音上の関係にある音。例:Cmaj7 の F(11) は 3 度の E と半音で衝突します。
代表例(回避音として扱う音)
- Cmaj7 → F(11)
- G7 → C(11)(3 度の B と半音で衝突)
使用上のポイント
- 伴奏では基本的に使用しませんが、音価が八分音符以下の短い装飾音としては許容できます。
- 上部ボイスに配置すると、半音衝突が目立ちにくくなります。
- 分散和音で広げて使用すれば、回避音が単独で強調されるのを防げます。
4. モード別に見るテンションと注意点
アイオニアン(メジャー)
- コード構成:1・3・5・7(長七度)
- 調和しやすいテンション:9・13
- 注意が必要なテンション:11(3 度と半音で衝突するため)
ドリアン
- コード構成:1・3・5・♭7(短七度)
- 調和しやすいテンション:9・11・13
- 注意が必要なテンション:なし
フリジアン
- コード構成:1・♭3・5・♭7
- 調和しやすいテンション:11
- 注意が必要なテンション:9・13(音階外)
リディアン
- 調和しやすいテンション:9・♯11・13(♯11 がスケール内の自然なテンション)
- 注意が必要なテンション:11(完全四度はスケール外で、使用するとアイオニアン的な色彩になる)
ミクソリディアン
- コード構成:1・3・5・♭7
- 調和しやすいテンション:9・13
- 注意が必要なテンション:11(完全四度は3 度と半音で衝突するため回避音になる)
エオリアン(ナチュラルマイナー)
- 調和しやすいテンション:9・11
- 注意が必要なテンション:13(♭13 と混同しやすく、トライトーンになる可能性がある)
ロクリアン
- コード構成:1・♭3・♭5・♭7
- 調和しやすいテンション:♭5(減5度)と♭13(♭13度)
- 注意が必要なテンション:♭9(根音と半音で衝突するため回避音)
解説:モードが変わると、同じコードでも「調和しやすいテンション」や「注意が必要なテンション」が変化します。たとえば、Cキーの IVmaj7(Fmaj7) をリディアン的に扱うと ♯11(B) が彩りを加えますが、アイオニアン的に扱うと 11(F) は3 度と半音で衝突し、回避音として扱われます。
5. 実践的な使い方
5‑1. テンションを加える基本ルール
- 根音・3度・7度は必ず含める(コードの骨格)。
- 5 度は省略しても構いません(機能への影響は小さい)。
- テンションは音価が短いか、分散和音にして使用すると、自然な解決感が得られます。
5‑2. 回避音の扱い方
- 短い音価で装飾的に:八分音符以下のフレーズの途中で Db(C7 の ♭9) を通過させ、すぐに E(3 度) や G(5 度) に解決させます。
- 上部ボイスに配置:ピアノやギターの高音部に置くと、半音衝突が目立ちにくくなります。
- 分散和音で分散させる:コード全体に広がりを持たせ、回避音が単独で強調されないようにします。
5‑3. ドミナントでのオルタードテンション活用
- 属七和音(V7)に ♭9、♯9、♯11、♭13 を同時に入れると、不安定さが増し、トニックへの解決が強く感じられます。
- 原則として、ナチュラルテンションとオルタードテンションは同時に入れません(重要)。
- 例外:上部ボイスで音が重ならず、かつ解決が明確な場合は許容できます。たとえば C7♭9♯11 を上部に分散させ、下部は根音と7度だけに留めるボイシングが一例です。
6. まとめ
テンション音は 9・11・13(♭9・♯9・♯11・♭13 も含む)で、コードに彩りと緊張感を与えます。
調和しやすいテンションは「ダイアトニックで、コードトーンと調和的な音程関係にある」音です。例として Cmaj7 の D(9) と A(13) が挙げられます。
回避音は「コードトーンの半音上、特に3度や5度と半音で衝突する」音で、基本的に伴奏では避け、装飾音として短く使用します。例として Cmaj7 の F(11)、G7 の C(11) などが該当します。
モードが変わると利用しやすいテンションと注意が必要な回避音が変化するため、モードごとの特徴を覚えておくと、コード進行に合わせた自然な音選びが可能です。
実践では、根音・3度・7度を確保し、テンションは短い音価や分散和音で、回避音は上部ボイスや装飾音として扱うと、バランスの取れたハーモニーが実現します。
このポイントを意識すれば、調性やモードに合わせてテンションと回避音を自在に操れるようになり、作曲・編曲・即興の幅が広がります。ぜひ次のセッションで試してみてください。