※画像はイメージです。本文と直接の関係はありません
タイトル: 伸び縮む銀糸の約束
朝光が温室の鏡に揺れる。鏡の裏に浮かぶ文字は「揺れる影は音になる――それは鏡の向こうで囁く小さな合図」だけ。リリは鏡前に立ち、鼓動と共に銀糸に指をかざす。背面の結晶が呼吸の熱で光帯となり、光が銀糸を揺らす。
鏡に映るのはリリのシルエットだけではない。揺れる影の中に、ぼんやりと子どもの姿がちらつく。リリが手を伸ばすと銀糸がきらめき、微振動が広がった。
文字が浮かび、銀糸が伸び子の影と重なる。光と音が交差し、時間の裂け目が開く。呼吸が過去と未来を結ぶ糸に思える。
リリが銀糸の先端を軽く引くと、指先が震え光が瞬く。糸は切れ、すぐに青白い光が再生し、子どもの影へ伸び二つのシルエットを結ぶ。影はゆっくり形を取り、リリの前に小さな笑顔を向けた。銀糸が揺れ伸び縮みし、二人を結ぶ。
胸で過去と未来が同呼吸を分かち合う感覚が走る。子どもはリリの手に小さな種を差し出した。「これが、次の私になる。」とだけ囁くと、光の粒が風に乗り消えていった。
夜、温室の壁に星空が流れ、桜が光る。リリは鏡の中の子どもと手を重ね、銀糸が奏でる微かな音と光に身を委ねた。伸びても縮んでも、形は変わり続ける――それが、リリが選んだ「伸び縮む関係」の答えだった。
