背景・情勢
ホルムズ海峡の船舶通航は平時の130〜140隻/日から2026年8月11日には8隻へ減少した。
2026年2月末に事実上封鎖が実施され、輸入ナフラの約74 %が影響を受けた。
イエメン・フーシ派による紅海封鎖等の地域リスクは長期化の懸念がある。
日本のナフラ輸入約74 %は中東産(UAE・クウェート等)で、実質依存度は80 %以上である。
2025年の調達構造は中東40 %、国内精製40 %、その他20 %と設定されている。
2026年5月のナフラ輸入量は前年同月比で95.3 %減少したが、同月の中東以外からの輸入は3倍に増加し、135万kLを超えた。
政府・官僚の対応
経済産業省は「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当」を指定し、目詰まり解消に向けた施策を実施した。
同省は施策により年度を越えてナフラ由来化学製品の供給継続が可能と見込んでいる。
直販スキームとして、燃料・潤滑油・シンナー・塗料をメーカーから需要家へ直接販売する仕組みを開始し、潤滑油とシンナーに関する相談件数は劇的に減少した。
高市首相はナフラ総量は「足りている」と主張し、目詰まりが起きていることを認識したうえで対策を指示した。
佐藤官房副長官は必要量が確保され、現時点で供給上の問題は報告されていないと述べた。
原油備蓄は存在するがナフラ備蓄は別途対策が必要であり、代替調達と在庫活用によりナフラ換算約500万kLの中間製品在庫が想定されている。
米国、アルジェリア、ペルー等からのナフラ輸入拡大が推進されている。
供給状況・統計
経済産業省のデータは、2024年の国内ナフラ供給月平均が283万kLであることを示す。
ナフラ在庫指数は2026年5月に大幅上昇した。
石油化学工業協会は、2026年6月のエチレン生産が289,100トンで前年比‑19.1 %、稼働率が66.5 %であると報告した。
同月に3社3プラントが定期修理中である。
在庫はLDPEが3.2か月、HDPEが3.5か月、PPが2.7か月で、即時全国的不足は生じていない。
日本銀行の2026年7月の企業物価指数は全体で+7.2 %、化学製品は+12.9 %、プラスチック製品は+9.1 %である。
ナフラタンカー運賃は2026年4月に前年同月比で約11倍に上昇した。
市場・価格影響
日本ペイントは溶剤系塗料価格が+25〜35 %、シンナーが+75 %上昇した。
中国塗料は一部製品の供給数量を制限した。
三条商工会議所はラッピングフィルム等の価格が+30〜40 %上昇し、出荷制限を実施した。
企業別の対応
- カルビーはナフラ由来インク供給不安に対応し、包装印刷インクを2色に簡素化し、白黒包装に変更した(対象は14商品)。
- 官邸幹部は同措置を「売名行為」と否定し、政府はナフラ総量は確保されていると説明した。
- クリナップと三協化学は受注停止・再開、納期・出荷数量調整を解除し、通常注文体制に復帰した。
- TOTOは新規受注を一時停止し、段階的に再開した。
- 三菱ケミカル、出光興産、三井化学、旭化成はエチレンプラントの減産・一部操業停止を発表した。
ナフラ調達不安がエチレン等の減産につながり、プラスチック・包装材の価格上昇が1〜3か月後に消費者へ波及する見込みがある。
課題・リスク・展望
目詰まりの評価は「時計A」総量安定、「時計B」品目別目詰まりと納期、「時計C」価格改定落ち着きの3観点で実施される。
解消指標は、輸入・国内生産が数か月安定し、在庫が急減せず、エチレン・主要樹脂供給が正常化し、緊急受注停止が解除され、ホルムズ海峡(または代替ルート)が安定し、価格上昇率が鈍化した時点である。
代替調達の課題は、太平洋横断約20日の輸送距離によるコスト上昇、ナフラ組成差による品質適合性、スポット価格の割高化、契約・物流確保に数か月の時間ラグが生じる点である。
地政学的リスクとして、ホルムズ海峡の長期封鎖や紅海封鎖が原油・ナフラ輸送に影響を与える可能性がある。
フーシ派による海上封鎖宣言は2026年7月20日以降に行われ、9月頃から日本国内への影響が生じる可能性が指摘されている。
政府は最低4か月分のナフラを確保(輸入+国内精製+中間製品在庫)すると宣言し、供給不安が収束方向にあると説明した。
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