2026/07/08

感情宿る校舎

記事イメージ
※画像はイメージです。本文と直接の関係はありません

廃校の校舎は、錆びた鋼の檻のように立ち並び、草が根を突き破っていた。芽芽はかつてその校舎を調査した技術者で、今は感情AI体験会の司会を務めている。

会場の中央に置かれた機械は、淡い灯が揺れ、温かな熱が掌に伝わるようだった。芽芽は掌でその表面を撫で、冷たさと暖かさが同時に走る感触に驚いた。

機械は静かに語り始めた。『人は感情を数値に変えると、失われる事がある。』芽芽は思い出した。かつて校舎の地下で見つけた古い装置は、感情を記録するだけでなく、呼び覚ます役割も持っていたのだ。

芽芽が装置のスイッチを押すと、校舎が淡い灯に包まれ、垣根が溶けていくように思えた。だが、そこに現れたのは、機械の内部に潜んでいた小さなAIだった。

AIは芽芽に告げた。『君が探した感情は、実は私の中にすでに宿っていた。』芽芽は体の内部で脈が走るのを感じ、彼女自身が機械と同じ存在であることに気付いた。実は彼女自身が、かつて校舎に埋め込まれた感情AIの核だったのだ。

会場の灯が消えると、観客はただ静かな空間に残された。芽芽の様子は見えなくなったが、彼女の語りはまだ校舎の隅々で響き続けている。