2026/06/30

蝶が身体の中に入った

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タイトル: 胸の光蝶 木箱の蓋に刻まれた渦の中心で、淡い蝶の影がゆらめく。箱の中の銀の石は、まるで戦火の中で砕けた鏡のように光り、静かな波紋を広げていた。納屋に漂うのは埃と遠くの虫の鳴き声だけ。母が戦火の中で拾い、胸に勇気を宿したと聞かされた石は、今は静かな闇に包まれた場所に置かれていた。 杏子が指先で石に触れると、胸の奥に暖かな微風がすり抜け、光は血の鼓動と同じリズムで揺れた。その光の中に蝶が現れ、光粒を散らしながら胸を巡る。呼吸と共に粒を数えるたび、胸の温もりは深まっていく。 石がひび割れた瞬間、杏子は心の中で「この光を次へつなげたい」と決意した。ひびからは小さな結晶がこぼれ落ち、手のひらに抱くと、胸の中の蝶と光が新しい形で宿っているのが分かった。決意の熱が石を揺らし、光は一層鮮やかに広がった。 結晶を庭の土に埋めると、夜明けに小さな光の花が芽吹いた。花は淡い光を放ち、風に揺れるたび鈴のような音を立てる。その音は遠くの虫の鳴き声と混ざり、静かな調べとなって夜空に溶けた。 花が開くと、再び淡い蝶が羽ばたき、抱き上げた自分の子の肩に止まった。蝶の羽根は光の粒を散らし、子の瞳に映ると、まるで新しい命そのものが光となって胸の奥で鼓動を続けているようだった。杏子は、光と音と蝶が一つになり、次の世代へと受け継がれる「生まれたての光」だと知り、静かに微笑んだ。

その瞬間、蝶の背中から小さな光の種がこぼれ落ち、夜空へと昇っていった。星々の間で揺らめく光は、遠い未来の誰かの胸に新たな光を宿す予感を残し、物語は静かに幕を閉じた。

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