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タイトル: 光の刻印 春の午後、瓦の隙間から差す光が石畳に細い縞を描く。裏庭の古い戸の下で、黒猫は丸まって眠っていた。足元を小さな虫がすり抜け、淡い光を放つ。その光は、まるで自分の魂を映すかのようだった。猫は光に顔を近づけ、毛皮がほんのりと揺れた。 石畳の裏側に続く木製の階段を降り、薄暗い廊下へ。奥の研究棟の窓から白衣の男が顕微鏡に向かっていた。手元のペトリ皿には、光に触れた蛍光ウイルスが揺れ、男は呟いた。「光が酵素を刺激し、RNAがざわめく」。 虫が猫の足元に止まると、羽の先から放たれた光が皿の蛍光と重なった。光は微小粒子に捕らえられ、ウイルスの外殻を瞬時に変容させた。石畳に淡い蛍光の痕が浮かび、葉影が揺れるたびに揺らめく。 男は目を見開き、驚きの声を上げた。「予想外だ」――その言葉と同時に、蛍光痕は規則的な点の配列へと変わり、やがてゆっくりと薄れた。ノートに走り書きされたのは、光触媒が酵素とウイルスを結びつけた事実だけだった。 猫は目を開き、瞳に微かな光が宿った。光は瞬く間にすべての存在を同調させ、情報が共鳴した。影は消え、残されたのは、誰もまだ解読できない新しい「記憶」の形だけ――そして、黒猫の背中に、かすかな光の痕が残っていた。そこには、虫でもウイルスでもない、独自の小さな魂が宿っていた。
