2026/06/27

クラブで踊る

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※画像はイメージです。本文と直接の関係はありません

タイトル: 影の羽根

チラシの「影」という文字に目が止まった。足は自然と、薄暗い入口のあるクラブへ向いた。

ドアをくぐると低音が揺れ、鏡の表面が微かに波打った。鏡の中には黒い影が揺らめき、そこに過去の映像が映し出された。雨の匂いと泥の感触が胸に走り、子どもの自転車が濡れた路面を走る姿がちらりと映る。すぐに今の自分がリズムに合わせて軽く踊り出す。鼓動はビートと揃い、足は音に乗って浮かんだ。

そのとき、白髪の女性が静かに近づき、低く呟いた。「音が形になる瞬間だ」指先が鏡に触れると細い光の裂け目が走り、淡い光が漏れた。音楽が高まると、裂け目から蒼い羽根がゆっくりと浮かび上がった。羽根の表面には小さく「影」と刻まれ、微かな振動を放っている。

女性はほんの一瞬だけ、かすかな笑みを浮かべた。彼女の瞳の奥には、過去と未来が交差する星屑のような光が宿っていた――それはこの場所を守る「記憶の司祭」なのか、あるいはクラブそのものが形を変えたのかは、はっきりしないが、彼女の存在は不思議な安堵をもたらした。

裂け目はゆっくりと閉じ、鏡の縁に小さな扉が現れた。扉をくぐると薄い光が廊下へと続き、外の街は静寂に包まれ、遠くで街灯が揺れるだけだった。

手の中の羽根は光を失わず、静かに光をたたえていた。羽根は、選んだリズムが形になった証であり、次の夜への招待状だった。彼は胸に残る余韻を感じ、再び音楽の鼓動を胸に刻むと、足を止めた。羽根は指先で軽く震え、やがて夜空へと溶けていった。

光が消えた瞬間、背後で扉がゆっくりと閉まった。そこに残ったのは、影と光が交差した一瞬の記憶と、次のクラブへ向かう足音だけだった。彼はその足音を、まるで新しい影が自分の背中に付いたかのように感じながら、夜の街へと歩き出した。


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