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タイトル: 雨の残像
雨のネオンに揺れる路地の奥、Pulseの看板がぼんやり浮かぶ。噂の『火事で消えたクラブ』は雨音に混じり遠くで囁く。ミツルは扉の前で足を止め、雨滴の跳ねる音を聞きながら、壁裏からジングルが漏れ、Pulseのリズムが雨に揺れるのを感じた。
扉を開くと鼓動するビートが壁越しに流れ、細い光糸が脈打つ。その奥に淡いブルーのドレスを纏うユリが立ち、銀色に光る『共鳴体』を握る。指が触れた瞬間、微光がほとばしり、ビートと共に光糸が揺れた。
ユリは低く告げた。「共鳴体は記憶と感情を光に映す」彼女の目は過去と今が交差する瞬間を捉えていた。光は音に合わせて形を変え、母の笑顔や遠い友の手、子どもの頃走り回った雨の路地が淡く映し出される。
ビートが最高潮に達し、光糸が虹色に輝く。ミツルが足踏みすると、二人のシルエットは波に溶けた。曲が終わり光がほどけ、ユリがスイッチを押すとクリックと共に煙のように消える。
「まだいるの?」とユリが呟く。ミツルは微笑んで扉を閉め、雨は降り続き街灯が水たまりを揺らす。その水面に映る影は、Pulseの光でも母でもない、子どもの自分の小さな姿だった。しかもその影は、まだ来ないはずの自分――未来のミツルだった。
彼は雨の音とジングルの余韻を胸に、心の中で踊り続ける。クラブは焼失したかもしれないが、共鳴体が映すのは建物ではなく、そこに集う人々の心の残像。次の雨夜、また同じ影が揺れる――忘れられた踊り手の記憶が呼び覚まされるとき。
