2026/06/28

運命?どうでしょうね。信じてもいいと思える瞬間はあるんじゃない?

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タイトル: 風が運んだ紙切れ

蝉の声が鳴く夕暮れ、駅のホームは灯りがゆらめく。ベンチに腰を下ろすと、掲示板の端に貼られた紙切れが目に留まった。

「運命って、本当にあるのかな?」――そのすぐ下に、細い字で続く言葉があった。「信じてもいいと思える瞬間が、たまにあるんじゃない?」と。紙の端には「※数字は鍵になるかも」とだけ書かれている。

電車のドアが閉まると、子どもの紙風船が突風に乗って掲示板裏の金属タグに引っかかった。そこに刻まれていたのは「7‑3‑2」だけだった。私はタグを外し、近くにいた若い女性に手渡すと、彼女はにっこり笑って「私のです」と言った。

女性は指で数字をなぞりながら、静かに語り始めた。「7‑3‑2は、子どもの頃に遊んだ駅裏の小さな広場の番号。そこは夏になると凧が空を埋めた場所で、私と妹は『大人になったら、またここで会おう』と約束したの。」

私は胸の奥で何かがはじけた。実は、数年前の雨の日、同じベンチに小さな紙を貼っていた。「忘れた約束、まだここにある」とだけ書いたものだ。その紙は清掃員に拾われ、別の掲示板へと回り、そして今、私の目の前に戻ってきたのだ。

その紙をそっと折りたたむと、裏側に淡く文字が浮かび上がった。「運命?どうでしょうね。信じてもいいと思える瞬間はあるんじゃない?」――まるで自分の心の声が、紙と共に戻ってきたかのようだった。

雨の匂いがホームに漂い出したのは、蝉の鳴き止む頃だった。夕立が降り、雨粒が灯りに揺らめきを加える。私はその雨の中で、女性の手に取られたタグを見ると、そこに刻まれた数字が、かつて自分が書いた紙の裏に書いた「7‑3‑2」と同じであることに気付いた。

それは偶然ではなく、忘れた約束が数字という形で呼び戻された証拠だった。女性は微笑みながら言った。「もしかしたら、私たちが探していたのは、数字そのものじゃなくて、そこに残る思い出だったのかもしれませんね。」

駅の雨の匂いと、遠くで走り去る列車の音。そこに、かつての約束と新たな出会いが交差した。自分が書いた言葉が、誰かの手で別の形に変わり、再び自分の前に届く――それは運命かどうかはまだ分からない。でも、確かに今、信じてもいいと思える瞬間が、ここにあった。


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